《教示③》第十二回
長谷川は小笑いしながら手を首筋へ宛てて自分を嘲った。三人は、初めからもう一度やり直し、考えを重ねることにした。
そうこうしているうちに、左馬介は少し神経質になっている自分に気づいた。全ては自分の力で、自分の意志で遣り熟さねばならぬことではないか…と、思えたのである。こうして自分の修行の手助けで長谷川や鴨下を巻き込んでいる。これでは自らの修行には成り得ぬではないか…と、更に追い撃ちをかける心が騒ぐ。そんな左馬介の心境は全く知らず、長谷川と鴨下は火が灯った燈明皿を木箱へ出し入れしながら、その所作で、どうのこうのと話している。その二人の姿を見ているうちに、少しずつ左馬介の心の中に、やはり一人でやるだけやって、駄目ならば正直に先生に告げるしかあるまい…という心が擡げてきた。
「お二方、もう結構です! 後は、この私、一人で考えてみます。有難うございました」
知らず知らず、左馬介の口から、そんな言葉が飛び出していた。何も云おうと意気込んで云った左馬介ではない。飽く迄も、感情の昂りが云わせたものだった。しかし、一端、発した言葉は、二本差しの身には重い。
「どうしてだ? 左馬介!」




