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《教示②》第二十二回

 幻妙斎が洞窟より漸く動いたのは、三月(みつき)が過ぎた頃であった。その日も左馬介は岩棚に座す幻妙斎へ修行の開始を告げると、洞窟を後にした。

 山道を駆ける手順も、取り分けていつもと変わらず、素早い身の(こな)しで駆け巡った。そうして、幻妙斎が設けた五ヶ所の吊るしの仕掛けの二ヶ所を、これもいつものように難なく叩き斬って熟すと、三ヶ所目を目指して駆けていた。その時である。左馬介が駆ける姿を観遣る一つの影があった。無論、左馬介は気づく筈もない。駆けることに全神経を研ぎ澄ましているのだから、それも当然なのだが、三月(みつき)の修行では、未だ足元や前方以外の全体を見遣る余裕はなかった。左馬介は全てを無難に熟しつつ、最後の仕掛けへと近づいた。そして、左腰に差した木刀を馴れた手つきで抜きながら、停まる位置を計って吊るしに近づく。今日が最初ではない上に、もう四半年もこうして駆け続けているのだから、要領とか微妙な感覚は充分に摑んでいる左馬介だ。吊るしの縄が次第に大きさを増して眼前に迫ると、左馬介は計算するでもなく感覚で停まり、次の瞬間には縄先の木切れを木刀で叩いていた。そして当然のように木切れが真っ二つに砕け落ちたのを確認することなく、ふたたび駆けだそうとした。

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