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《教示②》第十九回

その感情が、駆ける息苦しさを幾らか和らげてくれた。

 幻妙斎が云った通り、仕掛けられた道は確かに円弧の如く山肌に沿って輪を描いていた。洞窟から左へと道に入り、その後も左へ左へと辿って駆けている左馬介であった。故に、このまま、吊るしと幻妙斎が云った仕掛けを斬りつつ駆ければ、自ずと洞窟の右へと戻れる寸法である。若い頃の幻妙斎は、このようにして修業をしたのだろうか…。三ヶ所目の仕掛けに近づいた頃、左馬介は駆けながら不意に、そう思った。

 人の馴れ…とは、得てして不可能を可能にする。心中では、小さな不安に襲われた山駆けが、吊るしの四ヶ所目を過ぎた辺りから、さも当然の修行ように左馬介には思えてきた。それも、不安という心の曇りが消え去り、次が待たれるという気分なのである。所謂(いわゆる)、余裕めいた心に満たされたといえる。

 そうこうして駆け続け、最後に残った仕掛けの吊るしも無事、斬り捨て、左馬介はふたたび洞窟へと近づいた。

 幻妙斎が与えた第二の試練を、ほぼ成功裡に終えた…と、左馬介は胸を撫で下ろしつつ洞内へと入る。幻妙斎はというと、左馬介が洞窟を出る時と寸分、変わらぬ態で、動かず岩棚に座していた。

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