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《教示②》第十八回

一刀両断の気合いで叩き斬る(かた)を、果たしてこの息の乱れの中でも首尾よく捌ききれるのか…という不安が確かに左馬介の胸中に過っていた。

 接近して、頃合いの位置で停まり、左腰に差した木刀を素早い所作で抜き、中段の構えより上段、そして上段から居合いの如く斬り下げた。失敗すれば振り子となって遠ざかり、ふたたび叩き斬れる保障は全くなかった。左馬介の両手に激しい痺れが走り、同時に高く鈍い音が響いた。その瞬間、左馬介は無意識のうちに両瞼を閉ざしていた。そして開けた次の瞬間、両眼に映ったのは、緩やかに揺れる縄であった。その下には、へし折れた木切れの半分があり、もう片方は縄先に残ったまま小さく揺れている。だがその揺れは、振り子のような大きなものではなく、元の停止した状態からの微かな振動であった。首尾よくいった…と喜んでばかりはいられない。次々と待っている四か所があるのだ。左馬介は木刀をふたたび左腰へと差し、駆けだした。次の仕掛けを目指して駆けていると、駆けだした当初とは違う感情が心の奥底から湧き上がる。動きつつ縄先の木切れを一刀の下に両断できた安堵感であった。左馬介に少し余裕めいた安堵感が湧いたのは、功を奏した自信によるものに他ならない。

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