《教示②》第十三回
左馬介の声に返答はなく、暫くは静寂が辺りを覆った。四半時ほどもその状況は続いたが、突如として、
「そうか…。では観てとらす故、形を示してみい」
幻妙斎は静かに立ち上がると、下方に立つ左馬介を見下ろして、そう告げた。
自らの言葉を師が聞いてくれたことに、まずは安心した左馬介であった。約四半時の、なんと長かったことか…。師を仰ぎ見て一礼した後、左馬介は形を示す為、堤刀の姿勢で両瞼を閉ざした。そして、深く息を吸い込むと、その息を静かに吐いた。時はたっぷりとあるのだ。焦る必要など、毛頭ない。左馬介は両眼を閉ざしたまま、集中することにのみ努めていた。風とまでは云えない微かな空気の動きが、洞窟の入口から侵入して流れる。その流れがほんの僅か左馬介の顔を撫でた。しかし、左馬介は、たじろがない。想いが湧くのを打ち消し、心を無にすることに全力を傾注する。やがて、脳裡の全てがサーッと白日夢の如く消え去る一瞬が訪れた。左馬介には、この時ぞ…と考えるでなく閃いた。瞼をキッ! と見開いた瞬間、左馬介の木刀が動き、空を斬った。堤刀の姿勢から一瞬にして木刀を両手に握り、続けて上段に上げた位置から斬り下げる一瞬の連続技である。




