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《教示②》第十二回

 師は山道を杖を突きながら戻ってくるものとばかり予想ていたのだから、急に樹々の梢から舞い降りた姿に驚くのは当然とも云えた。歳は老人の域だが、身の(こな)しは左馬介を遥かに凌いだ。動きだけ観れば、誰もが左馬介より歳下だと思うに違いなかった。

「やはり来ておったか…。待たせて済まぬ」

 片手に杖、そしてもう片手には魚籠(びく)を持った幻妙斎が、寸分の息の乱れもなく厳かにそう云った。

「いえ…、さ程も」

 左馬介は小声で、そう返すのが、関の山であった。幻妙斎は委細構わぬ態で、左馬介にはそれ以上、語らず、洞窟へと入っていった。これは遅れてならじ…と、左馬介は師の後を慌てて追った。しかし、幻妙斎の動きは俊敏で、既にその姿を両眼で捉えることは出来なかった。それでも、いつもの奥まで踏み入った。すると、どうだろう。最初に左馬介が入った時には灯っていなかった燭台に明々と炎が揺れ、幻妙斎は岩棚に不動の姿勢で座しているではないか。その横では、これも燃えていなかった焚き火が勢いを増していた。

「先生! 未熟乍(なが)ら、いつかの剣筋を(かた)に致しました。御検分を!」

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