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《教示②》第十一回

そこを通り掛かった時、日が昇り始めたのである。遥か遠くに展望する山並みからの御来迎は、左馬介の心を清々(すがすが)しくした。

 その日、幻妙斎は洞窟にはいなかった。師が籠って座していないのは珍しいことで、中へ入った左馬介は一人で如何ともし難く、暫く外で待つことにした。というのも、中は燭台も灯っておらず、焚き火も燃えていないから、全くの暗闇なのだ。いくら豪の者でも不気味に思えるし、第一、少しずつ冷える足元は忍び難かった。今日、左馬介が来ることを当然ながら幻妙斎は知っている筈だ。と、すれば、不測の事態が生じ、急遽、出かけたか、或いは急に体調を崩したとも考えられた。洞窟を一端、とび出た左馬介は、あれやこれやと考えを巡らせた。

 左馬介の心配を他所に、幻妙斎は山を駆け巡り、漸く洞窟への帰途に着いたところだった。左馬介が隔日に来る頃合いは無論、知っていたし、忘れた訳でもなかったが、飼っている獅子童子が好物の岩魚(いわな)を獲らんとして、少し手間取った所為(せい)もあった。待たせることを嫌う幻妙斎の動きは素早かった。霞跳びを三、四度(たび)すると、もう洞窟へと帰っていた。突如として眼前に幻妙斎が舞い降りたのを見て、驚いたのは左馬介である。

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