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《教示②》第九回

 誰もいなくなった道場は、微かな動きすら見逃さず音になる。しかし、その音は、逆に左馬介を救うことにもなった。音の強弱で木刀の上げ下げの位置、力加減などの微妙な感覚が推し量れるのである。これには左馬介も助かった。形として揺るぎなきものにするには、如何なる場合においても ━━ そのように刀身を動かせば、自ずと対物は叩き斬れる ━━ といった不変の形を明確に定義しなければならない。その時々で結果が変わるようでは困るのだし、それでは(かた)を工夫したは云えず無意味なのである。恐らく幻妙斎も、やり直しを命ずるに違いなかった。そうならない為にも確固としたものにせねばならない。

「左馬介さん、昼を回りましたよ…」

 鴨下が手に盆を持って現れたことにも気づかぬ態で、左馬介は木刀を構えつつ、動きの定着に余念がない。鴨下は左馬介の返事がないので、そのまま盆を床に置いて消え去った。声をそれ以上、掛けなかったのは、気を遣ったのだ。盆の上には握り飯がニヶと数切れの香の物を添えた皿、それに茶が入った湯呑みが乗せられていた。門弟三人で食膳を囲むようになってからというもの、隔日は美味い茶が飲めるようになっていた。客人身分となった者達の数朱が入ることもあり、繊維問屋の坂出屋から出涸らした茶っ葉を貰わなくなった為である。

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