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《教示②》第七回

 今朝は左馬介がいるということで一層、稽古に熱が入っていた。左馬介は左馬介で、剣筋の記憶を辿る大命題が控えているから、二人の姿は眼中にない。長谷川と鴨下が組稽古をしている間、記憶を辿る素振りを繰り返した。それだけではなく、あの時と同じ仕草で大きく一つ息を吸い、そして吐くといった所作をし、続いて瞼を閉じた状態で同様の行為を繰り返すといった前段の動作から、再び試みていた。瞬時に木刀を脳天高く上げ、そして振り下ろす動作は、左馬介が決して計算し尽くしたものではない。だから、その動作を(かた)として身体で覚えるには、一挙手一投足を事細かに刻み、その動作を感覚ではなく視覚で確認する必要があった。左馬介は幾度も幾度も振り下ろす動作を、その時々で一端、止めては繰り返し、動きの確認をした。例えば、振り上げた時の木刀の位置、腕の曲げ具合や上がり具合、足運び…といった塩梅である。確認をして、その逐一を懐紙に筆で写し取り、説明書きを加える。矢立ては兄の市之進が、そして高級筆は(かつ)て門弟であった朋友、間垣一馬がくれたものだった。それ故、左馬介が今も大事に使い続けている経緯があった。数枚を書き終えて後、床板へ座り込み、それ等に再度、目通しした。

「おお! 偉く熱心だな!」

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