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《教示②》第四回

 縄は、一昨日(おととい)と同じ、大きな振り子の動きを始めた。左馬介は(おろむろ)に、手にした木刀を中段に構えた。振り子と化した木切れが結わえられた縄が、左馬介の方へと近づいて遠ざかる。その左右に揺れ動く最も地表へ近づく時…それが左馬介へ最も近づく時でもあり、叩き斬る唯一の機会なのであった。左馬介は道場の庭で昨日、行なった時と同様に大きく息を一つ吸い、そして吐いた。続けてもう一度、同様の仕草を両眼を閉ざしてした。それが終わると静かに瞼を開け、手にした木刀を中段に構えた。振り子の動きは少し弱まったようだが、相変わらず左右への振りを緩めない。右から近づき左へと離れ、また左から近づいて右へと離れる二度の機会を左馬介は待ち、その絶妙の間合いを探った。

「キΔ◎×※ェ~ィ!」

 遂に左馬介の手が動いた。振り子はふたたびその勢いを増して遠退き、そして激しい反動で近づいてくる。その時、幻妙斎の厳かな声がした。

「そうじゃ、剣は技を究めるだけのものではない。刀を手にした折りの心底の有りようも大事だということよ。刹那の判断や機転、工夫など、あらゆるものが必要となる…」

 木切れは道場の庭でのように、真っ二つに、へし折れていた。

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