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《教示②》第二回

 春ゆえ、日の出が早まっている。早暁だが、物音で長谷川達が目覚めぬうちに事を終えたい…と、内心での焦りが少しある左馬介であった。そうは云っても、剣筋を鈍らせるほどのものではない。焦りが厳しく戒められることは、これまでの修行で身に染み込まされていた。

「キ△◎×※ェ~~ィ!」

 左馬介の喉元から、思わず声が出た。後になり、鴨下や長谷川を起こさなかったか…と、省みたぐらいである。縄が薄闇に揺れていた。両眼で凝視すると、縄先の木切れは半ばで斬れていた。と…、そこまでは云うには口はばったい形で、へし折れていたと表現できる態になり、半ばが地表へ叩きつけられて落ち、もう片方は、かろうじて縄に結わえられたまま傾き、揺れていた。左馬介の手に握られた木刀が、ものの見事に縄に吊るされた木切れを斬った、いや、へし折ったのである。幻妙斎が与えた第一の課題が解け、とり敢えず左馬介は、ほっと胸を撫で下ろした。その時、鶏鳴が静寂を破って響き渡った。天空は漸く白々として柿の木の輪郭を(あらわ)にし、薄闇が退去し始めていた。

 この日は別に何事もなく過ぎ去った。左馬介は物音に気づかれかったことに、少しだけ、ほっとしていた。

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