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《教示①》第二十回

 左馬介が身体上の疲れではなく、気分的に滅入っていることを知る由もない。だが、左馬介の方としては、僅か五尺ばかりから飛び降りる日々の修練めいた稽古を、とても指南して貰っているとは口が裂けても云えないのである。小僧の使いでもあるまいし、恥をかくのは目に見えていた。勿論、長谷川は、そうした事情を全く知らないから、左馬介を遠くから観望して哀れと思うのである。それに比べ、鴨下はと云うと、食い気だけが旺盛で、そうしたことを察知する心などは持ち合わせていない。腕前が上達しないのも、そんな図太さが左右しているようであった。しかし、それが鴨下の長所とも云えた。なんといっても、周囲の人々を明るくする類い稀な才能なのである。この日も左馬介の様子を遠目に観望していた長谷川とは違い、鴨下は密かに厨房で昨日の残り物を摘んでいた。この男、めっぽう里芋の煮付けが好物なのである。三人なのに四人分を煮て、自分は二人前を平らげるのだ。今、漁っているのは昨日残しておいた一人前だった。だから、鴨下が道場に来て以来、残飯や残った惣菜はことごとく鴨下が処理していたから、捨てられるものは皆無となっていた。それは今に至っても続いている。万事が万事、この調子なのだから、自ずと鴨下の性格は計り知れようというものである。

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