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《教示①》第十八回

 左馬介にすれば、渓流の水で握り飯を食べる積もりだったものが、熱い茶を啜れるのだから、これはもう願ったり叶ったりなのだ。近頃の道場は、多くの門弟が客人身分になってからというもの、二乃至三日に一度、白湯(さゆ)ではなく茶が振舞われるようになっていた。各門弟から月、一朱の金が月謝代わりに入るということもあったが、現場の人数の激減が大きな要因だった。客人身分は或る種、幽霊的な存在なのだ。門弟ではあるものの、表立って道場を闊歩(かっぽ)しない、いや、出来ない決めが厳然とあったのである。

「そうか…早く帰れと先生がな。これは予想外だったな、ハハハ…」

 長谷川らしい豪快な笑いが辺りに(こだま)した。

「それにしても、誰一人として呼ばれなかった先生が、左馬介さんを指名されたんですから、大したものですよ」

「そうだぞ、秋月。お前は果報者だ。蟹谷、井上、それに樋口のお三方でも駄目だったんだからな」

「いや、本当に快挙ですよ、左馬介さん」

「そ、そんな…。私など諸先輩に比べれば、まだまだと思っておりましたが…」

 謙遜する積もりもない左馬介であったが、二人に褒められ、つい咄嗟(とっさ)にそう応じた。

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