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《教示①》第十回

そうなれば長谷川の一人相撲である。口を閉ざさざるを得ない。左馬介は堂所へと歩き出し、長谷川もその後に続いた。

 堂所には鴨下がいて、丁度、三人の膳を調えたところだった。三人になってからというもの、厨房より堂所へ運ぶ膳の移動は左馬介と鴨下が一日交代で行っていた。詰まるところ、三膳のみだからである。準備は今迄どおり二人だが、人数が減った分、そうバタつくことも無くなった為である。今迄の喧騒が嘘のように、三人の朝餉は実に静穏である。陽気な鴨下も敢えて語ろうとはせず、左馬介もこの日は無言であった。長谷川は、ただ箸を無造作に動かせるのみだが、矢張り、つい今し方の左馬介との会話が尾を引いているようであった。来月といえば残り十日ばかりなのだが、左馬介には幻妙斎が待つ刻限などは分からない。しかし、一応の心積もりとして辰の上刻には妙義山の洞窟に着くように出よう…。それに木刀を一本持って行くか…などと心を巡らせていた。ただ、左馬介にも迷う事柄はあった。出で立ちである。道場の稽古着で出るのか、或いは山中の冷えも考慮に入れ厚着で出て、稽古着は木刀に結わえて行こうか…といった事柄であった。

 食後、左馬介が口を噤んで膳を片付けていると、左隣へ寄り添うように近づいた鴨下が小言で語り掛けた。

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