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《教示①》第五回

その金が如何にして工面されたのかを左馬介は知らない。しかしそのお蔭で、金銭で困窮するという難儀は無かった。

「随分と寂れましたね」

「えっ? ああ…。この道場のことですか」

「そうです。今じゃ私と秋月さん、長谷川さんの三人だけですから」

「まあ、現場はそうですね。五人の方々は客人になられましたからね…」

「この先、誰も入門しないのでしょうか?」

「そんなことを私に訊かれても…。先生のお考え一つですから」

「そうですよね…」

 昼餉の握り飯を頬張り沢庵を(かじ)りながら、左馬介と鴨下は話をしていた。そろそろ梅の花香が漂う侯で、春の東風(こち)が流れている。恒例の梅見が近づいていた。葛西代官の樋口半太夫からは、例年通り招待する旨の(ふみ)が届いていた。代官は云わずと知れた樋口静山の父である。子が道場に世話になっているという理由からではなく、梅見の宴への招待は古くからの慣例だから、道場に閑古鳥が啼こうと道場が消滅したり、或いは代官所と道場の因縁が断たれない限り、その行事として定まった催し自体が無くなるということはない。

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