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《教示①》第二回

 いつもなら、べったりと座布団に伏す形で寝入っている筈の獅子童子が、その日に限って、きちんとした風体で身形(みなり)を正し、人を眺めているではないか。一瞬、左馬介の目線と細目で見る猫の目線が合った。左馬介はその涼しげな獅子童子の目線に、久しく会っていない師の幻妙斎を見る心地がした。勿論、獅子童子がいるということは、近辺に幻妙斎が存在していることを意味するのだが、かといって、師が現れるのかと云えば、百のうち九十九までもが(いな)なのである。それ故、左馬介は次の瞬間には目線を反らし、馬鹿げた師の幻覚を拭おうと、長谷川や鴨下と話を始めていた。しかし、それは左馬介の幻覚などではなかった。三人の様を密かに屋外より観望する幻妙斎、正しくその人がいたのである。三人はそのようなことは当然、知らない。幻妙斎は左馬介の剣を見分する為に現れたのである。

 妙義山の洞窟を下り、麓の村で左馬介の風聞に触れた幻妙斎が、その腕を眼で確かめようと道場へ戻ったのだった。無論、そうしたことも左馬介は知らない。暫く稽古の様子を観望していた幻妙斎は、丁度、左馬介が二人と語りだした折り、その姿を霞の如く消した。場内の獅子童子は幻妙斎後を直ぐに追うようなことはせず、少し遅れて間合いを取る。

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