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《剣聖③》第二十七回

結果として、朝稽古の喧噪はその勢いを弱め、あれだけ激しく響いていた竹刀と竹刀が交わるささくれだった音や(かん)高い掛け声も、騒がしいとは云えぬ程度まで衰えていた。

 三人で行う朝稽古は実に閑散としている。今迄が多人数での稽古だったことも、左馬介をそう思慮させる一つの要因であった。去った蟹谷や井上は最終的には奥伝止まりで道場から消えた。勿論、最終の決めをして允許(いんきょ)を与えるのは幻妙斎なのだから、そのことに異論を唱える者はない。今、左馬介の腕は師範代になった長谷川修理を上回り、堀川一の遣い手となっていた。

 実は昨年末、蟹谷、井上とともに堀川三強と呼ばれた樋口を年末の総当たり試合で負かしたのだ。これは快挙と云う以外にはない卓抜した結果で、師の幻妙斎もこの機を境に、ぷっつりと左馬介の前から姿を消し、眼前へ現れることが途絶えた。だがそうは云っても、過去、そう幾度も左馬介が師を眼にすることは無かったから、さほどは気に留めず腕を磨く左馬介ではあった。

 三人の朝稽古は交互に入れ替わるという遣り方である。師範代に昇格したとはいえ、今迄と違う小人数では長谷川も中央にデンと構えて観て立つという訳にもいかない。それに腕前は左馬介の方が数段は上なのだから、逆に教えを乞う立場なのである。

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