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《剣聖③》第二十四回

表門と裏門は、がっしりと閉ざされているから、賊が逃げるとすれば四方を囲う小高い土塀を飛び越え、外部へ出る以外にはない。二人はひとまず表門へと向かった。その頃、賊を追う長沼は表門から右折して道場の裏手へと続く細道を走っていた。当然、賊はその前を逃げ走る。左馬介と鴨下は長沼を追っているのだが、長沼の姿が見えている訳ではない。気配や僅かな音を手掛りに後を追っているのである。その辺りが、賊を見ながら追う長沼とは違った。

 左馬介と鴨下が長沼の姿を捉えた時、長沼は賊を土塀前に追い込んでいた。蛇に睨まれた蛙とはよく云ったもので、賊は一歩も動けない。左馬介が見たところ、第一感は浪人崩れである。賊だけではなく、長沼も動かずに賊を鋭く見つめるだけだから、その場の時が停止したように左馬介の眼には映った。賊は外への脱出を試みようと(まなこ)だけを右や左と動かせ、手段を探る。だが、小高い土塀は容易に飛べ越せそうになく、もはやこれまでかと観念したやに左馬介には感じられた。当然、長沼の気迫が賊を威圧したことも事実に違いなかったのだが…。土塀と土塀との隙で僅かに窪んだ部分があった。そこだけは(あたか)も鍵穴の如く凹んでいる。賊はその凹みに身を委ねて、左右と後方の安全を計るが、逆に考えれば袋の鼠なのである。

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