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《剣聖③》第十五回

 時を同じくして、道場では左馬介が早朝の隠れ稽古に精を出していたが、未だ新しい剣筋を編み出す迄には至っていなかった。それでも、防御の太刀筋は以前ら比べれば数段の向上をみせていた。当の左馬介自身にも、その受け筋の剣捌きが上達したことは自ずと分かっていた。

 薪が格納された小屋には、長縄に(くく)られた一本の薪が天井から吊り下げられていた。そして、その薪には襤褸(ぼろ)布が巻きつけられている。左馬介は、それを木刀で打ち叩く。その木刀にも布が巻かれている。故に、他の門弟達を物音で起こす心配はなかった。最初に一太刀を薪に浴びせると、吊り下げられた薪は、振り子の動きをして反対方向へ遠退き、その後、反転して戻ってくるのだ。それを左馬介は、ふたたび打ち叩いた。その振り子の如き揺れは、打ち叩くごとにその戻りの速度を増していく。そして、左馬介が、もはやこれ以上、叩けぬ…と木刀を止めれば、振り子の揺れは緩慢になっていく。ここで左馬介は暫し息遣いを整えるのである。二百回の打ち込みが終われば、長縄を緩めて目立たぬ薪束の奥へと隠す。そうしておかないと、小屋へ入った他の者に気づかれ不審に思われるのだ。この工夫も、単なる素振りから新たに左馬介が考案した稽古法であった。

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