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《剣聖③》第五回

 果たして、そのことがよかったか、或いは悪かったのかは、それより先の左馬介が歩んだ剣聖への道を辿り見なければならないが、(いず)れにしろ、一馬との別れが左馬介にとって剣の転機になったであろうことは疑う余地がなかった。

 その年の夏が巡った。左馬介と鴨下は、相も変わらず朝餉の準備で厨房に立つ。味噌汁の大鍋が井戸に吊ってある。それを鴨下と二人で引き上げ、小鍋の中へ今日の分を移し、ふたたび井戸へと下ろすのだ。これで三日ばかりは炊かなくても済む。要は、井戸が自然の保存場なのである。夏場はこのように措置しなければ、足が早くて、とても日持ちなどしない。だが、慣れとは恐ろしいもので、今に至っては苦ともならない左馬介であった。去年の経験が既に慣れとなっているのである。一方、鴨下は今年が初めての経験だったから、その奇妙な行いに、まず驚いた。それ故、全ての動く所作は左馬介の追随である。左馬介も去年は一馬に追随していたのだから、鴨下が真似て従っていることを当然だと思っていた。

「さあ、これで準備出来ましたね。朝稽古に行くとしましょう」

「はいっ!」

 二人が稽古場へ入ると、朝稽古は正に始まったばかりだった。

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