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《剣聖③》第二回

 左馬介は俄かに話し相手を失ったことで、すっかり萎えていた。

 その後、一馬の音信はひと月の間、ぴたりと途絶えた。最初の十日ばかりは左馬介の心中にも、ぽっかり穴が開いたような空洞の部分が存在したが、それもやがて小さくなっていった。その心の空洞を、少し年長(としなが)の鴨下が(なだ)め、忘れさせてくれた。当然のことながら、一馬がいなくなった稽古相手は長谷川修理である。一馬は左馬介と長谷川との両方を相手にしていたから、その一馬が抜けたことで通常の割り切れる組人数に戻ったことになる。というのも、鴨下は未だ稽古に加わることを井上に許されておらず、傍観するのみの立場だったからだ。左馬介が漸く一馬がいなくなったことを意識から外せた頃、事が逆に運び、その一馬が戻ってきた。それは丁度、昼からの全員による(かた)稽古中であった。

 一馬は突然、稽古場へと現れた。門弟達は組になって形稽古の最中だったから、受ける側である約半数の者は、その姿に否応(いやおう)なく気づいた。一方、打ち方で形をする側の者は、気づく者もいたが、大方は気づかなかった。或る意味、打ち方の者が一馬を眼にする訳がないのである。眼にした者は気が(そぞ)ろで集中出来ていないと云えるからだ。

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