表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/612

《剣聖②》第二十六回

 左馬介は━ 弱ったな… ━ と、空を眺めた。生憎(あいにく)、早朝は降る気配が全くなく、雨傘を持たずに道場を出たのである。ぽつり、ぽつりと降り出したのは、それから間もなくである。左馬介は慌てて小間物屋の軒へと駆け込み、身を潜めた。瞬く間に本降りとなった雨は、滝のように流れ落ち、地面を激しく叩く。雪駄履きの足袋を雨滴の容赦ない跳ね返りが冷たく濡らす。だが、今となっては仕方がない。小降りになるまで待つ以外、手立てがない左馬介であった。

 幸いにも雲の流れは早く、流れの反対側の空は明るかった。

 小降りになり、空が明るさを取り戻した頃合いをみて、左馬介は走り出した。とは云え、思うように早くは走れない。今し方、立ち寄った腰掛け茶屋まで走り、ひとまず軒で呼吸を整える左馬介であった。

 その時、先ほど盆を運んだ娘が店奥から番傘を手にして現れた。

「お困りのご様子。宜しければ、この傘をお持ちになって下さいまし。返しは、いつでも結構でございますから…」

 ハッとしてその声に振り返り、左馬介は黙って娘の言葉に聞き入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ