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《剣聖②》第二十三回

十六文を置いて店を出た左馬介は、続けてぶらつくことにした。昼過ぎの街道は閑静という程ではなく、時折り早足で通る旅人の往来があった。

 ほんの少し溝切宿の方向に歩くと、札の辻と地元で呼ばれている十字路へと出た。角には、以前、千鳥屋と対立していた旅籠の三洲屋があったが、廃れて当時の面影は既になかった。左馬介は、ふと五郎蔵一家のその後の様子を知りたくなった。一家は、千鳥屋騒動で潰れたとは風聞で知ってはいたが、実際に己が眼で確かめたくなったのである。

 札の辻より三町ばかり歩いた所に、かつて一家が(たむろ)していた廃屋があった。蜘蛛の巣が家屋のあちらこちらと漂う入口に人の気配は皆目ない。蟹谷、樋口、山上の三人で一家の三十四人を始末したあの日から、この屋の人の気配は失せたのだ。左馬介は入ろうとしたが入ることを躊躇(ためら)い、そして断念して引き返した。これ以上、見る必要がないように思えたからである。ふたたび札の辻へと戻り、物集(もずめ)街道へと出たところで右折した。帰途ではなく、左馬介としては未だ道草気分で、ぶらつきたいのである。時も夕刻迄には、たっぷりあるから、心理面の、ゆとりは充分にあった。

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