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《剣聖②》第十一回

「あのう、お侍さま…。(ほこり)が立ちますから」

 店の(しつ)けが行き届いているとみえ、大層、上品な言葉遣いで丁稚小僧が話し出した。その目線は地面に尻をついて座る左馬介を捉えていた。左馬介は、何を考えているという訳でもなかったが、自分が店の入口に座っていることを、つい忘れていた。幾らか早めに目覚めたことや、疲れが溜まっていたこともあった。丁稚にひと言、云われた刹那、左馬介は未だ修行が足りぬ…と思った。所謂(いわゆる)、隙が生じたと悔んだのである。もし、これが丁稚ではなく刺客であったなら、左馬介は一刀の下に斬り刻まれていたであろう。それを分かっている左馬介だから、修行が足らぬ身の未熟さを心で嘆いたのである。こんな体たらくでは、蟹谷に出会い、幻妙斎との指南の経緯を訊くのも情けなかった。それでも、一応は地面から立ち上がり、

「蟹谷さんは、いつ頃お見えでしょうか?」

 と、その丁稚に訊ねていた。

「いつも昼過ぎに来られるのですが、それが何か?」

 丁稚は逆に左馬介へ訊き返した。蟹谷がいつ頃、この千鳥屋に現れるかは疾うに分かっている左馬介なのだ。それが、つい弾みで訊いてしまったのである。

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