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《剣聖②》第四回

「蟹谷さんが昨日、先生に会われたとか…」

「えっ! 先生に…。それは(まこと)ですか? ど、どこでです?」

 一馬と鴨下が話す声が廊下を歩いていた左馬介の耳に偶然、聞こえた。丁度、葛西の権十(ごんじゅう)という百姓が、畑で採れた作物を持って道場へやって来たので、その応対をして小部屋へと戻る矢先であった。だから、左馬介としては聞こうとして聞いた話なのではない。ただ、偶然に聞いた話としては、余りにも左馬介の心を乱す内容であった。蟹谷は客人身分だから、外出中にどこで幻妙斎に出会おうと、決して不思議ではない。だが、鴨下がどのようにしてそのことを知り得たのか? 謎が謎を呼んで、左馬介の心を掻き乱した。

 その日の夜、十三夜の朧月が見られた。それも、晩春の薄雲が霞み棚引く程度で、煌々とした光が地上を照らしていた。

「いい月ですねえ…。つかぬことをお訊きしますが、昼、一馬さんと話されていた蟹谷さんが先生と会われた、という一件なんですが…」と、単刀直入に左馬介は鴨下へ投げ掛けた。すると鴨下は、朧月を眺めながら、「ああ…その話でしたか。いやあ、私も偶然、と云えば偶然なんですがね…」と云って笑い始めた。

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