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《剣聖②》第一回

 道場の門弟達にとっての楽しみと云えば、そう幾つもあるものではない。日々の修練を積み重ねる剣の道なのだから、それはそれで仕方がない…と思えるが、そこはそれ、やはり人間なのである。

 皐月に入れば、行事的に宴席へ招かれるといったこともなく、早や端午の節句である。この時期だけ道場の中央神前に飾られる(かぶと)が、左馬介と鴨下の手によってふたたび収納されようとしていた。千鳥屋で蟹谷が四度目の五十文を手にした頃のことである。

「あとは私がやっておきますから、鴨下さんは、もう部屋へ戻って下さい」

「いいえ、私も覚えておきたいですから…」

「左様ですか? じゃあ、この手燭台を持って照らして下さい」

 蝋燭の灯りで、かろうじて辺りに納められた調度品などが見えるといった程に暗くて気味悪い納戸の中である。鴨下が先導する形で奥へと進んでいく。左馬介は一馬に教えを乞うていたから収納場所を知ってはいたが、実のところ、去年の梅雨時に入門したのだから、この兜を収納するのは初めてなのである。だから、余り先輩面(づら)を出来るほど周知はしていなかった。それでも一応は古参として振る舞うのだった。


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