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《剣聖①》第二十九回

 余程、五郎蔵一家の嫌がらせには困っていたように思える喜平の道場に対する肩の入れようだった。五郎蔵一家が道場の蟹谷、樋口、山上の三人によって始末されてからというもの、商売敵(がたき)の三洲屋も廃墟と化し、今は泊り客にも事欠かない千鳥屋である。喜平が堀川一門を(あが)(たてまつ)るのも、当然といえば当然だと云えた。

 蟹谷は鱧の骨きりを酢味噌に付け、口へと運びつつ酒を飲む。やがて、頃合いに身体が火照れば、道場への帰途につく。客人身分とはいえ、門限だけは別で、刻限迄に戻らないと、場内へは入れない。外の行動に関しては無礼講で、勝手気儘(きまま)が許されているとはいえ、これのみ、どうしようもなかった。

 帰路の約十町は足取りが軽くなる。(ふところ)に入った手間賃の五十文も、ずしりと重く感じられる。蟹谷にとって、薪割りの小仕事は今月に入りこれで三度目で、あと二度もやれば、これでこの月の一朱は道場へ納められる手筈なのだ。それに、月一度、千鳥屋の用心棒まがいで喜平の供に付き合えば、また別の一朱は包んで貰えるといった御の字の収入源もあった。懐具合は、そういうことで苦にする必要もなかったが、剣の修練の道は、また別である。左馬介と同様、蟹谷もまた剣聖への道を模索していた。


                                剣聖① 完


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