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《剣聖①》第二十五回

無論、道場での稽古は日々、続くのだから、稽古中は全力を傾倒せねばならない。要は、外見上の所作は初心者に戻る訳にもいかないから、今迄の所作で致し方ないのだ。皆の目もあるし、それは当然だった。しかし、内なる心理面では今迄と異なり、全てが計算ずくでない…という無心で相手と対するのだ。その心境こそが、新たな技を編みだす第一歩となる筈だった。

 次の日の朝が明けようとしていた。いつもの隠れ稽古をする刻限が近づくと、やはり自然と左馬介の瞼は開いた。そして(とこ)を抜け出す。こうした所作もいつもと同じで、それから堂所裏へと進み、薪入れ小屋へ入ったが、この朝の左馬介は、ここからが少し違った。左馬介は傍らにあった(むしろ)(ゆか)へ敷くと、そこへどっしりと腰を下ろした。さらに、瞼を閉じると、胡坐(あぐら)の姿勢のまま冥想に入った。すると、何故か今迄の出来事が走馬燈のように映像で脳裡を駆け巡った。今迄とは、初めて堀川道場の門を潜った去年の梅雨時から今年の春に至る迄である。剣の上達を日夜、考えて過ごした追憶、そして道場で起きた回想場面の数々だった。

 外では春の雨が降り出した気配があった。冬とは違い、暖かい雨音である。

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