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《剣聖①》第二十二回

 通用門の鍵を開けたのは井上である。場内に一行が入ると、珍しく偏屈者の樋口静山が皆を笑顔で迎えた。

「やあ、各々(おのおのがた)、お帰りか。どうやら、これで拙者も、お役御免のようですな」

「御苦労でした。おい、鴨下!」

 井上に呼ばれた鴨下は、右手に持った()(じゅう)と左手の酒樽を樋口の前へ置いた。

「大した馳走ではありませんが、後で摘んで下さい」

 井上は自らが準備した馳走でもないのに厚かましくそう云うと、軽く一礼した。新師範代として、偏屈者には丁重に接した方が得策…とでも考えたのだろうか、と左馬介には不埒(らち)に思えた。そうだとすれば、余りにも打算的だからである。

「では、遠慮のう…」

 そう云うと、樋口は両手に提げ重と酒樽を持って立ち去った。左馬介は歳若ということで、皆も酒をそうは勧めなかったが、それでも盃を一、二度は受けたので、少し身体は火照っていた。無論、一馬も同じである。そこへいくと、新入りの鴨下は豪の者と見えた。歳を食って世間慣れしているということもあるのだろうが、五合以上をグビグビと(あお)っても全く普段と変わらなかった。

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