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《剣聖①》第十四回

 別に、代官の次男だというのが理由ではなく、やはり、幻妙斎の影番として仕えている、と見るのが正当なように左馬介には思えた。

 (うずくま)っている旅女に、印籠の丸薬を口移しで含ませたのは客人身分の蟹谷だった。梅林に着いてから分かったことだが、女は俄かの(しゃく)らしかった。背中を(さす)ったのは井上である。新旧、二人の師範代が介抱する姿を見遣りながら、残りの門弟達八人は道の両側の草叢(くさむら)へ腰を下ろした。立っていても仕方がないと思えたからである。その中には当然、左馬介もいた。

 四半時ほどが過ぎ、女が元気を取り戻した様子を見て、蟹谷と井上は喜びを(あらわ)にした。その二人を見て、門弟達も安堵した。女は皆に何度もお辞儀して、礼を尽くすと去っていった。束の間、皆は旅女の後ろ姿に見蕩(みと)れ、茫然と立っていたが、井上の「おい! 行くぞっ!」のひと言で我に帰った。そして、ふたたび二列縦隊を組むと、歩きだした。時は、余裕をもって道場を出立したこともあり、梅林で待つ代官所の一行には遅刻を謝す必要はないようであった。一行は約束の午の刻まで大よそ半時を残し、梅林へと到着した。そこかしこに梅の花が見事に咲き乱れ、満開は間近に感じられた。

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