表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/612

《剣聖①》第十二回

暖かい…と迄は云えないが、苦になる寒さではなかった。この程度ならば、酒の勢いで丁度、頃合いの外気になりそうだ。左馬介は最後尾を鴨下と並んで歩きながら、そう思った。草鞋も、この朝は幾らか軽かった。

 代官所の副収入にもなっている梅林は、堀川道場と葛西代官所の丁度、半ばに位置した。梅林までの距離は、どちらも約一里だから、道場と代官所とは大よそ二里ばかり離れている計算になる。梅林が代官所の副収入になるというのは、花が散った後になる梅の実によるもので、大粒の葛西梅は結構な(あたい)で取り引きされたからである。無論、代官所の収入は幕府の収入になるのだが、近郷百十余戸を含む直轄地の管理費等にも回されていた。当然ながら、堀川道場へ下賜(かし)される金も、その中に含まれた。

 一里といえば誰の耳にも、かなりの距離…と聞こえるが、日々、鍛錬を重ねる堀川の連中が早足で歩けば、そう大した距離ではなかった。皆、物見遊山の気分で、ゆったり歩いているつもりなのだが、何故か足の方が勝手に動いていた。先頭を切る井上と久々に見る蟹谷の姿が不意に止まったのは、梅林まで十町ばかり手前だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ