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《剣聖①》第四回

 鴨下が大広間で挨拶した折り、自分のことを粗忽者だと云ったことも、(あなが)(へりくだ)ってのこととも思えぬ節があった。

 鴨下の稽古は、やはり左馬介の時と同じで、日々が板間での正座であった。左馬介は足が痺れた自らの経験を想い出し、誰もがそうなのだ…と得心した。板間で座布団なしの正座は確かに、きつい。左馬介は何とか耐え忍んだが、三十路の鴨下には流石に辛いのか、四半時も経つと、片足を崩したりして動きだした。それを目敏(ざと)く見ていた井上が、

「ははは…。鴨下、それまでか?」

 と、笑って云い放った。鴨下は、ばつが悪いのか、思わず首筋に手をやって掻いた。

胡座(あぐら)でもいいぞ。よ~く観ておけよ」

 井上はそう云うと、また全員の稽古を見回し始めた。一馬は相も変わらず、長谷川と左馬介の両者と対峙して稽古をする日々が続いていた。だがそれも、鴨下が組稽古を許される日が来れば解消されるのだ。そう思えば、きつい、という感覚も失せた。一方、左馬介は? といえば、鴨下へ心を砕いた日々が返って剣筋の迷いを忘れさせ、本来、持ち合わせた剣筋へと戻しつつあった。一馬は左馬介の太刀を受け、そのことを肌で感じた。


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