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《剣聖①》第三回

 毛嫌いするという性質のものではなく、近づけないのだから不都合この上ない。日々の賄いは否応なしにめぐってくるのだ。一馬が厨房から姿を消したのだから、全てが左馬介の肩に掛かっていた。

「私に付いて手伝って戴ければいいのです。最初は私の動きを見ていて下さい」

 初めて厨房に立った鴨下へ、左馬介は恐る恐る声を掛けた。

「分かり申した…」

 昨日、(おとな)ったうらぶれた風貌は一変し、風呂で小ざっぱりとした鴨下が、低く響く声で答えた。その声には、どこか二の句を継げない威圧感がある。吐息の白さも薄まり、あれほど冷たかった水が少し温み始めた感のする早朝であった。

 鴨下は案に相違して飲み込みが早かった。左馬介の所作や云い伝えたことは全て記憶していて、同じことを二度行う必要もなければ、云う必要もなかった。半月もしないうちに、大よその賄いの要領は覚えてしまい、左馬介をすっかり安心させた。それにも増して鴨下という男が割合と話し易い男だったことが、左馬介の心を開放させた。鴨下の話を聞くにつけ、どうも剣術の方は余り凄腕とも思えない。少なからず、早とちりの感は否めないのであった。

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