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《修行③》第二十七回

 鴨下は雪の中を藁沓(わらぐつ)履きで来ていた。先ず、雪を被った笠を頭から外し、そして体を纏った蓑を取る。次いで鴨下は敷居に座ると、沓を脱いで上がった。既に神代は廊下を歩き出している慌てた鴨下も、その後を追って歩き出した。

 左馬介が無精髭の鴨下を見たのは、神代が堂所へと抜けるため、稽古場の廊下を横切ったときであった。当然、その後方には鴨下が付き従っていたから、この時、うらぶれた姿の鴨下を左馬介は初めて見たのである。

 井上によって鴨下が紹介されたのは翌日の大広間だが、事前に井上から左馬介と一馬へひと声かかったのは朝稽古が終わった直後であった。堂所へ入ろうとする二人に、「一馬は、晴れて昼餉から賄い番を放免だ、よかったな。…左馬介は、新入りを上手く仕込んでやって貰いたい。詳しくは明日、云う」と、井上は賑やかに笑いながら放った。一馬は、やれやれと胸を撫で下ろせば事は足りるが、左馬介は、そうはいかない。如何に新入りを仕込むか…、その辺りが難しい。今度は一馬がそうであったように、自分が賄い(がしら)の身になるのだから、責任というものが自ずと生まれつつあった。これからは剣筋の向上と新入りの指導という二束の草鞋(わらじ)を履くことになるのだ。左馬介は心を引き締めた。

                                  修行③ 完


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