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《旅立ち》第二十回

 この疑念は、かつて以前、左馬介が不審を抱いた道場に必要な諸経費の出所と相俟って、左馬介が問題視するところであったが、納得できる、事の真実を知るのは数ヶ月ばかり先である。

 夕餉を全員で食する堂所(どうしょ)と呼ばれる大広間は厨房続きになっていて、屋根まで吹き抜けの構造だった。日々の煤煙(すすけむり)によって、(はり)棟木(むなぎ)、それに柄柱(つかばしら)などは黒々と不気味である。所々に立てられた蝋燭の燭台に照らされ、門弟達の顔が怪しく揺れた。夕飯は朝に炊かれた残飯だから、当然、冷や飯である。ほとんどの者は湯漬けにして掻き込むようにそれを食らった。惣菜に焼き魚が出るなどは良い方で、大よそは香の物だけの日が多いと一馬は云った。

「それは無論です。飯は毎日ですからねぇ。…かといって、一汁一菜が日々ですと、身体が持ちませんし…」

 と云いながら、一馬は既に食べ終えていた。左馬介は、まだ半分方は残している。闊達(かったつ)な一馬の食べ様に、左馬介は驚かされるのみである。(あたか)もそれは、食べるというよりは、胃の腑へ早々に納めると云った方がよい食べ様であった。

「何を考えておられるのですか? 早く食べて仕舞わないと、後の片付けもありますから、就寝までの貴方の時が無くなってしまいますよ」

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