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《騒ぎ》第二十二回

 五町の距離など、僅かな時で辿れる。五郎蔵一家が千鳥屋の店前に現れる迄には、さほども掛からなかった。

「よし! 裏口は、あっしが塞ぐ。頼んだぜっ」

 政太郎は熊次にそう告げると、子分達、約半数を従え、裏口へと回った。この状況からすれば、五郎蔵一家三十二人に対する山上一人の図式になるところであった。だがその頃、堀川道場では別の状況が派生しようとしていた。堀川幻妙斎の命を受けた蟹谷が、葛西の地侍(葛西者)の門弟である樋口と千鳥屋に迫っていたのである。云うまでもなく、山上の助っ人としてであったが、堀江道場から千鳥屋までは約十町の距離があり、少しは早く道場を出たことになる。この状況が派生するには、時が少し遡る。

 堀川道場では夕餉も終り、皆が浴衣姿で裏庭続きの川岸に散らばっている。この夜も蛍の乱舞は見られたが、いつぞやの比ではなかった。浴衣姿の門弟達が涼みがてらに川岸を歩く。その中には、蟹谷の姿も見られたが、蟹谷は幾分、早めに場を離れると自分の小部屋へと戻っていった。夏場は昼の暑気を外へ放つ為に、門弟達が寝暮らす小部屋の戸は、葦簾(よしず)張りに全てが変えられている。夜だというのに、未だ蝉が(すだ)いていた。門弟部屋の内部は外気の冷えはなく、やはり少し暑かった。

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