表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/612

《騒ぎ》第十九回

一度(ひとたび)、出奔したからには、もう戻れぬでな。だがのう、(わし)が考えるに、用心棒よりは、もうちと増しな身の処し方もあろうが…」

 堀川道場に数年、山上は世話になっていたから、その声の主が幻妙斎であることは、すぐさま分かった。

「せ、先生!!」

 山上は天井を望み、声を大きく掛けた。

「まずは云っておこう。既に鼯鼠(むささび)の五郎蔵は、この世にはおらぬ」

「えっ! …先生が?!」

「そのようなことは、どうでもよいわ。そなたが心することといえば、明日以降、五郎蔵一家が殴り込むであろうということじゃ。心せよ。儂から伝うることは、それだけじゃ」

 幻妙斎の声が消えた後、猫がひと声、ニャ~と鳴いた。そして静寂が戻ったが、山上は、ふたたび杯を口にすることはなかった。

 幻妙斎が予言したとおり、五郎蔵一家では翌朝、熊次と政太郎の二人の代貸しが、他の子分達を前にして息巻いていた。特に政太郎に至っては、昨夜あのまま寝入ってしまった自分の不覚が、よほど腹立たしいのか、顔を真っ赤に染めた憤怒の形相である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ