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《旅立ち》第十回

(わし)が幻妙斎じゃ。父より聞いておろうが…。そなたの名は左馬介であったな? まあ、今日のところは、これ迄と致そう。弟子どもには既に云い渡してある。開いておる故、そこの通用門より入り、ゆるりと致せ。(いず)れ、また会おうぞ」

 片手の杖で通用門を指し示し、その白鬚(しろあごひげ)の老人は、ふたたび土塀瓦へと一気に舞い上がり、瞬時に消え去った。左馬介は、自分が夢の中で幻覚を見ているような錯覚に襲われていた。

 云われたままに通用門を屈んで開け、内へ入ると、眼前に飛び込んだ景観は、左馬介の予想を遙かに上回る佇まいであった。それはもう、単なる道場というのではなく、(あたか)も砦とでも例えられる堅牢な構えの建造物の存在であった。その建造物の一角からは、門前で聞こえた稽古の掛け声が、先刻と同じというよりは幾らか、ざわめいて、左馬介の両耳を覆った。左馬介は、その声のする方角へと少し躊躇(ちゅうちょ)しながら歩いていった。武士の歩みは摺り足だから、ほとんど音はしない。

 やや広い玄関先は、開け放たれてうす暗い。入口の間口(まぐち)五間(けん)以上はあるだろう…と、左馬介は思いつつも、恐る恐る中へ入っていく。そして、

「頼もう!!」

 と、門前で出した大音声を、ふたたび張り上げた。

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