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6:I-1

I

一体どうしたというのだろう。

心配と不安の感情が私を襲う。こういう時人間は身体をあわてて動かしたりするんだろうが、意識だけの状態ではただただ感情に飲み込まれることしかできない。

アヤトにインストールアイコンを送ってから十分、何の反応もなかった。

それだけならまだしも、それから私が送ったメッセージに対して何の反応もないのだ。

十分、二十分、三十分、返信のない時間はどんどん伸びていく。

アヤトの身に、その身体に何か異変があったとしか思えない。

理由は一つしか思いつかなかった。最後のやりとりでアヤトが言及した、自分の身体に関する異常のことだ。

眠っていたはずなのに、身体を動かした形跡が残っている。誰かが中に入った(物理的に)という、自分の体験したことのないはずの記憶が残っている。

そしてそれに対して、私は一つの推測を立てた。

私以外のエゴが、アヤトの身体の中に入った。

それは推測というより確信に近かった。アヤトは昨夜眠る直前に妙なメッセージを受信したという。そのメッセージを開いたとたん、私が入ったとき同様、多種多様な図形が蠢く、画像とも動画ともつかないものが視界に飛び込んできたという。

これはまず間違いなく、何らかのデータが視覚を通して、人間の身体に入り込むという現象だ。私もそうやってアヤトの身体に入った。

しかしその想定に対して奇妙なことが一つある。

それは、アンセムの反応を全く感じることが出来なかったという事だ。

私の感覚は常にアンセムの反応、アンセムが現実世界に表出するのを察知することが出来る。それはこのデバイスの中にいようが、アヤトの身体の中にいようが、それは関係ない。

しかし昨夜、そんな反応は微塵もなかったのだ。ということは、この前戦ったペテロのような、アンセムが送り込んだエゴではないということになる。

じゃあまさか、私と同じ、プロメテウスによってアンセムから切り離された……?

それにしても、私の呼びかけに何の反応も返してこないのはどういうわけだ。

私は十分おきに、やがて五分おきに、ついには一分おきにメッセージを送ってみたが、何の反応もない。

これだけ着信を知らせれば、デバイスそのものの存在に、アヤトでなくても誰かが気付いてくれそうなものだが。

バッグの中にでも仕舞われたのだろうか。それとも電源を切られた?(電源を切られても「Bird Cage」の機能は途絶えることは無く、私の意識も存続はしていられる)

そしてさらにここで、追い打ちをかけるような反応が訪れた。

今度は間違いない。アンセムの反応だ。

アンセムが送り出したエゴもしくはイドが、活動を始めたようだ。

一刻も早くこちらも動き出したいのに、今の私が出来るのはメッセージを送り続けることだけだ。

もどかしいこと、この上なかった。

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