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4:M-1

やっほー、アタシの名前はMisa:ミサ。

元々はコンピュータの中にいたデータの塊、みたいなものかな。

ようやく現実の世界に出ることが出来た、立派な女の子。

今はこうして、女子用の学校制服を着て(ちょっとサイズは合ってないから、おっぱいとかおへそとかふとももとか丸見えだけど)、学校という場所にいる。

そして今は、アタシのことをうーんとあったかくしてくれる人を探していまーす。

さっきの男の子、ホント残念だったな。筋肉とかすごくガッシリしていて、昨夜の男の人よりもあったかそうだった。だからこっちも精一杯頑張ってみたのになぁ。

ま、ちょっと暖かくなったからいいか。


アタシはとりあえず今いる場所を適当に歩いていた。壁と天井がどこまでも長く続いている、多分廊下だ。

さっきまでは男の子も女の子もちらほらいたのに、もう全然いない。右側には外を見渡せる窓があり、反対側にはドアが並んでいる。それが教室っていうんだっけ。

中を覗くと、男の子や女の子が綺麗に並んで座っている。なるほど、これが学校の授業っていうんだ。

そんな発見をしつつ、出口を探して歩き回ってると、

「こら、そこで何してるの!教室に戻りなさい」女の人の声に呼び止められた。

振り返ると、そこには眼鏡をかけた、小柄だけど目つきの鋭い、40歳くらいの女の人が立っていた。多分この学校の先生だろう。

「あなた……その髪、その服、そのスカート……あぁもう!何て格好なの!ちょっとこっちに来なさい!」言葉と共に、その先生の顔の皺がどんどん増えていく。

その言葉に答える代わりに、アタシは全力で駆けだした。

「待ちなさい!」

ヤバいヤバい。アタシは一応学生服を着てるけど、この学校の生徒じゃない。捕まったらいろいろメンドいことになりそうだ。

階段を見つけて駆け下り、一階へ。

後ろの方から足音は聞こえない。追いかけてこなかったのかな?ま、どうでもいいか。

そしてアタシは外に出た。

初めて浴びる、太陽の光。人の身体にくっついた時ほどじゃないけど、あったかい。

アタシは両手を思いっきり広げて、空からの光を全身に浴びた。


ここに来るまでは、何だかよく分からない場所にいた。

思い出そうとするだけで、全身が凍えすぎでぶるぶると震えてくるような、そんな場所。

そう、そこはめちゃくちゃ冷たくて寒い場所だった。

誰もいない。いや誰かいるんだけど、アタシもいない。

いっぱいいるのに、アタシは一人きり。

そこに、光がさした。今浴びている太陽の光よりも、他の人の身体よりも、

そんな光の中で、アタシは生まれた。

そして今アタシは人間の身体で、この世界にいる。

それでもまだ、心の底に残る冷たさは全然消えてくれない。

だから、それを消してくれるあったかいものを、探し続ける。


学校を出てしばらくは、男の人なんか全然見かけなかった。

あったかさを味わう分には、相手は別に男の人じゃなくてもいいんだけどね。

女の人だっていい、子供だっていい。別にワンや猫でもいい。

実際、道を歩いていて見つけた、ひょこひょこ歩く猫ちゃんや、門のところに鎖につながれたワンちゃんには、思わずギュッとしてしまった。

温度的な温かさで言えば、人間よりも上だった。抱きしめるとちょっと熱いくらい。

でも、そのあったかさが伝わるのは、身体の表面だけ。

アタシの冷たい部分は、もっともっと深いところにある。

アタシが欲しいあったかさに一番近いものを、昨日の夜男の人に抱かれて感じたんだ。

あの人は結局、アタシを抱きしめてキスをしてくれた、それだけで終わってしまった。最初はアタシが抱きしめられる形で歩いてたのが、いつの間にかアタシの方があの人を支えるような感じになり、家に着いた途端にその人は意識を失ってしまった。

その結果についてはかなり不満だったけど、でもおかげでアタシが欲しいあったかさの正体が見えた。

寒さの原因は、アタシの中にある。

アタシという意識の底にある、氷の洞窟。

そこに届く熱さは、男の人じゃないと手に入らない。男の人が、アタシを求めてくれる、アタシの中に入って、心の底を炎のように燃え上がらせてくれる。

アタシが欲しいのは、それなんだ。だからアタシはこの身体を使って、アタシのことをあっためてくれる男の人を捜す。

アタシの中の冷たい部分は、全然無くなる気配がない。

寒い、冷たい、寒い、凍える、寒いさむいさむい……!

アタシの足取りも自然と早くなってきた。運動をすれば、身体という殻だけは熱くなってくれる。

早く、早く誰か、

アタシを、あったかくして……!


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