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天球のカラビナ  作者: イツロウ
07-覚醒者の選択-
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 クロトがカミラ教団本部があるセントレアに向けて出発の準備を進めていた頃。

 その教団本部の入り口には6人の女性の姿があった。

「しかし、あっさりと話が済んだわね。2日、3日は覚悟してたのだけれど……」

 そう言いつつ白い長髪を手櫛で整えていたのはリリサだった。

 白というより透明に近い細長い髪は、昼時の日光を浴びてきれいに輝いていた。

 また、その髪は微風に煽られ、高級絹のレースカーテンのごとく波打つように揺れていた。

「……ですね。たったの10分でしたものね」

 リリサに同調するように頷いたのは白いパーカーを着た褐色肌の少女、ティラミスだった。

 紺色のショートカットはきれいに切り揃えられており、前髪の下には眼鏡が、眼鏡の向こうには知的さを感じさせるアメジストブルーの瞳があった。

「そりゃあそうでしょ。カミラ教団のトップは情報を握っていたのだし」

 ティラミスの言葉に間髪入れず告げたのは、淡い桃色の髪に金色の眼を持つ秀麗な女性。狩人にして猟友会の会長を務める、カレンだった。

「情報って、何の情報でしょうか……?」

 ティラミスの純粋な問いかけにカレンは呆れた風に答える。

「クロトとリリサの父親のスヴェンが密会し、3000万の労働力を条件に共生の道を歩むって話よ。それくらいわかりなさいよねー」

「……確かに、情報を得ていたならカミラ教団のあの対応も頷けます」

 カレンの解答に反応したのはモニカだった。

 襟高のコートを着込んでいるので鼻から下は見えない。唯一見えるのはグレーの瞳の三白眼とその周りにある濃い隈くらいだ。

 佇まいも一般人のそれであり、素人目からしても戦闘員には見えない。

 だが、幾度かの修羅場を潜り抜けてきこともあってか、年不相応の貫禄があった。

 モニカは襟で覆われた口元を指先で弄りつつ、説明を続ける。

「こういった事態を想定して既に対応策は複数用意されていると考えていいと思います。後はエヴァーハルト主任の報告を鑑みて、どの策が適当かを選ぶだけかと」

「で、その対応策とやらを選ぶのにどのくらい時間がかかるんだ?」

 5人の女性陣の中で唯一地面に座り込んでいたのはジュナだった。

 両足をぴたりとくっつけて垂直に腰を降ろし、両腕で膝を抱えている。

 オレンジ色のサイドテールは肩でバウンドして腕の中に流れ込んでおり、毛先まで確認することはできなかった。

 相変わらずの軽装で、薄手のシャツにミニスカートという狩人らしからぬ格好をしている。が、グローブとブーツは本格的なものをつけており、また、細身ながらも引き締まった四肢や鋭い眼光は一般人のそれとは明らかに違っていた。

 モニカはジュナの行儀の悪さにについて特に注意するでもなく、質問に的確に答える。

「公開していい情報と非公開にすべき情報の再確認や色々細かい調整もありますが……1日もあれば準備できると思います」

「1日か。田舎(エンベル)に帰るには時間がたりねーか……」

 ジュナはがくりと首を落とし、長い溜息を吐いた。

 ため息混じりに呟くジュナにティラミスは声を掛ける。

「そんなにお兄さんのことが心配なんです?」

「いや、兄貴が俺のことを心配してるんじゃねーかと思ってな」

「どちらも同じような気が……」

「――確か貴女のお兄さんってダンシオ・アルキメルよね?」

 ティラミスの指摘を遮るようにカレンが話に割り込む。

「ラグサラムでの一件は聞いているわ。あの男、かなりの使い手だったのに……残念だったわね」

「勝手に同情するなよ。兄貴は片腕だけでも十分強いっての」

 ジュナのこの言葉は強がりでなく、事実であった。

 超人的な力を有するトキソと戦闘し、片腕一本だけで済んだのだ。

 リリサやモニカ、そしてジュナは当時の事を思い出しているのか、表情が暗くなっていた。

 ティラミスは場の空気を変えるべく話題を変える。

「と、とりあえず、あとはクロト様と合流するだけです。ね?律葉様?」

 ティラミスに声を掛けられたのはショートカットにカチューシャが似合う白衣を纏った女性、律葉だった。

 急に話を振られた律葉だったが、慌てるでもなくティラミスの問いに応じる。

「そうね。合流したらそのまま代表者同士の話し合いになると思う。あちらはブレインメンバーが出るとして、こっちの代表はカミラ教団のお偉いさんになるのかしら?」

 律葉の純粋な疑問にモニカは指折り数えつつ応じる。

「そこまでは聞いてないですが、エヴァーハルト主任とカレンさんは確実に代表者に選ばれると思います」

「そう、なら安心ね」

 モニカの返答を聞き安堵する律葉だったが、息をつく暇もなくジュナから質問が飛んでくる。

「それはそれとして、クロトとはいつ合流できるんだ?」

「一応真人は“救世主”だし、ブレインメンバーと言えど提案を無下にはできないはず。……まあ、こっちも1日くらいかな」

「なるほど……つーかお前、俺たちと普通に喋ってねーか!?」

 ジュナの驚きの声に、今更ながらリリサやモニカも驚きの表情を浮かべる。

 そんな反応を見られて満足したのか、律葉は勿体ぶることなく種明かしをした。

「これのおかげよ」

 律葉は髪を掻き上げ耳を露わにする。そこには小型のイヤホンが装着されていた。

 そのイヤホンを指先で撫でつつ律葉は説明を続ける。

「翻訳機よ。……読み書きはともかく、会話なら齟齬なく意思疎通できそうね」

「さすがは律葉様、すごいです」

 羨望の眼差しをティラミスから受けるも、律葉は首を横に振って謙遜する。

「凄いのは私じゃなくてこの機械の処理能力と、この世界の言語体系を研究してデータベース化した真人よ」

 いわゆる辞書だ。でなければリアルタイムで未知の言語を翻訳するなんて不可能である。

 いずれ解凍される人類のことを考えて作成してくれたのだろう。……さすがは真人だ。

 一介の研究者として素直に感心していた律葉だったが、モニカは感心するどころか、かなり興味津々な様子だった。

「私も興味があります。後で見せてもらっても構いませんか?」

 モニカは律葉にぐいっと近付き、至近距離から耳元を観察する。

 さすがの律葉も恥ずかしかったようで、距離をとって咳払いする。

「それはそれとして……真人が来るまで時間がかかりそうだし、とりあえずこの街を見て周ってもいいかな?」

 律葉は研究者として、そして観光者としてもこの街に興味があった。

 話し合いが上手く行けば後からのんびり見学することもできるが、条件によってはしばらくこのエリアに立ち入ることができなくなる可能性もある。

 ならば今のうちに観察しておかねばならない。

 そんな気持ちから出た律葉の言葉に対し、リリサは二つ返事で応じる。

「別にいいんじゃない? ティラミスがいれば迷子になる心配はないし、厄介事に巻き込まれることもないでしょ」

「エスコートは任せてください」

 ティラミスは眼鏡をクイッと持ち上げ、自信満々に告げる。

 強い・頼もしい・可愛い、と三拍子そろった彼女がいれば心強い。

 どこから見て回ろうかと早速考え始めた律葉だったが、すぐに別のメンバーが同行を求めてきた。

「あ、私も付いて行っていいかしらー?」

 軽く手を挙げつつステップで近付いてきたのはカレンだった。

 気軽に言うカレンに対し、モニカは難色を示す。

「いいんですか? 一応は会長なんですし、猟友会にも顔を出しておいたほうが……」

「いいのいいの。面倒なことは全部エヴァーハルトがやってくれるわ。それよりも今は異文化交流よ。私はリツハのことやあちら側の事情をもっと知っておきたいし」

「そんな身勝手な……」

 カレンの滅茶苦茶な言い分にモニカは呆れて物も言えないようだった。

 流石にこのモニカの言葉には思うところがあったのか、カレンは持論を展開する。

「リツハに興味があるのは事実よ。でも、リツハも私から色々と聞きたいことあるでしょー? ……私、こう見えて猟友会の会長だし、口外できないような話も色々と教えてあげるわよ」

 律葉にとってこの提案は魅力的なものだった。

 そして、特に断る理由もなかったため律葉はカレンの同行を認めることにした。

「わかりました。……この際だし、そちらの3人も一緒にどうかな?」

 カレンの同行を許可してしまったのだし、どうせなら女子みんなでわいわい街歩きするのもいいかもしれない。

 そんな呑気な提案を否定するかのごとくモニカは即答する。

「私はエヴァーハルト主任の報告が終わるまで教団本部で待機です。今はこの場を離れるわけにはいきません」

「そうだよね……」

 モニカに断られた律葉は何気なくリリサに目を向ける。

 リリサも迷う素振りすら見せず首を横に振った。

「悪いけれど私は鍛冶場に行くわ。槍のメンテをしないと」

 リリサは螺旋の槍を軽く回し、石突で地面をコンコンと叩く。

 そんなリリサにカレンは肩をすくめる。

「いいじゃない。会談が上手くいけばもうクロイデルに襲われる心配もなくなる。武器なんて必要なくなるわよー」

「確かにそうかもね。……でもこの槍は父の形見だし常に綺麗な状態にしておきたいの」

「……なら仕方ないわねー」

 モニカとリリサは駄目だった。残るはジュナだけだ。

 が、誘いの言葉を告げるまでもなくジュナは拒絶の意を示した。

「オレはお前と馴れ合うつもりなんて1ミリもねーよ」

 ジュナは律葉を指差し、釘を刺す。

「今はまだ“友好関係”じゃないってこと、忘れるなよ」

 まだ仲間ではない。が、敵でもない。

 ならば少しでも交流を深めておきたいというのが律葉の考えだったが、ジュナには理解されなかったようだ。

 ジュナはそれだけ告げるとそそくさとその場から去っていく。

「どこに行くの?」

「……食堂」

 リリサの問いに短く応えると、ジュナはそれ以降振り返ることなく猟友会本部の建物内へと姿を消してしまった。

 ジュナの態度について、カレンはニヤけ顔で言う。

「あの娘も素直じゃないわねー。まあ、そこが可愛いのだけれど」

 そんなカレンとは違い、モニカは顎に当たりに手を当てて真剣に考えている様子だった。

「彼女の言うことももっともです。ちょっと気を抜きすぎていたかもしれません。……でも、ジュナさんも悪気があって言っているわけではないですし、気にしなくていいと思いますよ」

 悪気がないことは律葉にも分かっていた。だが、はっきりと言葉にして言われるとやはり傷つく。……ツンデレな性格だと思っておこう。

 ジュナが一抜けしたことで、他のメンバーもそれぞれ行動を起こし始める。

「……じゃあ、私は鍛冶場に行ってくるわ」

 リリサは槍を片手に右手の階段を降りていき

「私も、一旦教団に戻りますね」

 モニカも回れ右をしてカミラ教団の建物内へと入っていってしまった。

 取り残された律葉とティラミスとカレンもワンテンポ遅れて移動を開始する。

「私達も出発しますか」

「わかりました、律葉様」

「しゅっぱーつ」

 さて、街中にはどんな物があるのだろうか。

 先行きに若干の不安を感じつつも、期待に胸おどらせる律葉だった。



 ――猟友会は全身真っ黒の化け物「ディード」を退治するために結成された組織である。

 その規模は巨大で、世界に数十の支部を持っており、支部では様々なサポートを受けられる。

 ディード討伐の依頼はもちろんのこと、ディードの死骸の買い取りや武器のメンテナンスサービス、そして簡易的な宿もある。馬も貸し出してくれるし、至れり尽くせりである。

 これは狩人という仕事のリスクを考えると当然なサービスだが、そうとわかっていてもうれしいものである。

 特に食事。

 全ての支部に必ずある食堂はとてもありがたい。

 狩人であれば無料で飲食可能であり、夜には酒もでる。しかも美味いので文句のつけようがない。

 そして本部には支部のそれとは比べ物にならないほど広い大食堂がある。

 交易地とあって、食材も種類が豊富で新鮮なものが多く、メニューの数も多い。

 そんな大食堂にて

 ジュナはカウンター席に腰掛け、料理が来るのを待っていた。

(やっぱここは豪華だなぁ……)

 ジュナがこの大食堂に来たのは初めてではない。

 先日の上級狩人試験、その申請手続きの合間に一度だけここで昼食をとったことがある。

 初めてこの大食堂に足を踏み入れた時はその広さに驚いたものだ。

 席数はざっと見ただけで300を超えている。が、余裕をもって設置されているので窮屈な感じはしない。頑張れば倍以上の席数が確保できそうだ。

 また、支部とは違ってテーブルは木目調の美しい、彫刻があしらわれた立派なものが置かれており、床や壁面も汚れ一つなく、清潔感があった。

 現在座っているカウンターテーブルも綺麗に塗装されており、表面は光沢を放っている。

 ジュナはその美しい模様を水の入ったグラス越しに眺めていた。

(このコップも高いんだろうなあ)

 大食堂では食器も綺麗なものが使われており、料理の味を引き立てるのに一役買っている。

 このグラスもそうだ。

 支部では飲み物は木製のコップに入れられていたが、ここではくすみ一つ無い透明のグラスが使われている。

 中に入っている水もとても澄んでおり、高い水に違いない。

 この水を無料で飲めるだけでも幸せなのに、料理まで無料とは……

 改めて猟友会の太っ腹振りにはただただ感服するばかりだ。

(早くこねーかなあ……)

 今日はチーズリゾットやハンバーグ、そしてオリジナルオムレツなどの高タンパクな料理を頼んでいる。

 前回は時間に余裕がなかったのでサンドイッチだけしか食べられなかったが、今回は何も気にすることはない。思う存分旨い料理を堪能してやろうではないか。

 そんなことを考えつつ料理を待っていると背後から声を掛けられた。

「あれ、ジュナ一人だけ?」

 至近距離から不意に声を掛けられ、ジュナは反射的に振り向いてしまう。

 ジュナの視線の先、そこにはクロトの姿があった。

「クロト!?」

「そんなに驚くことないじゃないか」

 ジュナの素っ頓狂な反応が可笑しかったのか、クロトは少し笑っていた。

 長い前髪に整った顔立ち、体躯は太ってもなく痩せてもなく、高くもなく低くもなく、ぱっと見は普通の青年だ。

 だが、心根は優しさと誠実さでできており、好青年という言葉がよく似合う男性だとジュナは思っていた。

 まあ、簡単に言うと優男だ。

 出会った時は軟弱で気合の足りない野郎だと決めつけていたが、ラグサラムの一件以降は株が上がりっぱなしだ。

 竜型のディードを倒した時はその強さに驚いたが、実は2000年間も地球外からの侵略者と戦っていた救世主だという事実を知らされて納得できた。

 普通ではない。過酷な人生を送ってきたに違いない。なのにどうしてこんなに優しい笑顔を他人に向けられるのか。頭のネジが外れているのか。精神が悟りの領域に入っているのか。

 何にせよ、どうかしているとしか言いようがない。

(……こいつを好きなオレもどうかしてるけどな……)

「ジュナ? どうかした?」

「!!」

 どうやらクロトの顔を見ながら物思いに耽っていたみたいだ。

 心配そうに見つめてくるクロトの視線を回避し、ジュナは絞り出すように言う。

「いや、予想以上に早かったんで驚いたんだよ」

「そんなに驚くことかなあ……」

 クロトは応じつつ、自然な所作でジュナの左隣の席に座る。

 ジュナは急に接近してきたクロトに対し背を向けることもできず、体を向けることもできず、結局正面を向いたまま固まってしまった。

 そんなジュナの心情の変化を知ってか知らずか、クロトは話し続ける。

「僕らの方はともかく、そちらもスムーズに進んでるみたいで何よりだよ」

「おう。教団の連中、こういう事態をある程度予測してたんだとさ」

 ジュナは前を向いたまま説明する。

 クロトはジュナの異変に特に気づく様子もなく会話を続ける。

「僕とスヴェンが接触していたことはエヴァーハルトさんに筒抜けだったからね。その時から対策を練っていたんだと思うよ」

「じゃあ行ってきたらどうだ? クロト側の情報を伝えれば教団側も助かるだろ」

 我ながらナイスなアイデアだと思ったジュナだったが、クロトの反応は芳しくなかった。

 クロトは肩をすくめ、ため息混じりに告げる。

「そう思ってついさっき教団本部に行ったんだけれど、入口で“部外者は立入禁止です”って言われて入れなかったんだよ」

「あーなるほど」

 “前人類との交渉”という前代未聞の事態に、カミラ教団はかつてないほどに警戒レベルを高めている。

 クロトは面も割れているし、警戒されて当然だ。

 ようやくここでジュナは視線をゆっくりと左に向ける。

 クロトはテーブルに頬杖をついており、憂鬱そうだった。

(横顔……)

 クロトの横顔をこうやって間近で見るのは初めてかもしれない。

 想い人の憂い顔に少々ドギマギしつつも、ジュナの頭からはある考えが離れなかった。

 ……やはり普通の人間にしか見えない。

 この体のどこからあんなでたらめな力が出せるのだろうか。理解不能である。

 クロトは「それはそうと……」と前置きし、ジュナに顔を向け質問する。

「他の皆は? もしかしてこれから皆で食事?」

 ジュナは首を横に振る。

「いや。クロトと合流するのにまだ時間がかかると思ってな、みんなそれぞれ街やら鍛冶場やらで時間を潰してる」

「そうかい。……で、律葉はどこに行ったか聞いてるかい?」

 やはりというかなんというか、クロトは恋人の事が気になるようだ。

 もし教えたらすぐにでも食堂を出て彼女の元に向かうのだろう。

 場所を知っていれば教えるか教えないかで悩んでいたところだろうが、幸いなことにジュナは律葉の行方を知らなかった。

「街の方に行くとは聞いたけど、詳しい場所は知らないな」

 気兼ねなく正直に答えると、クロトは悩ましそうに側頭部あたりを掻き始めた。

「困ったなあ。無線通信も範囲外だし、隼もどっか行っちゃったし……少し面倒だけれど手当たり次第探すしかないか……」

 ジュナの読み通り、クロトは律葉を探すべく席から離れる。

 クロトの腰が椅子から離れたその瞬間、ジュナはクロトの脇腹あたりをぐわしと掴んだ。

「待てよ」

 ジュナは若干俯きながらクロトを椅子に座らせ、しどろもどろに言葉を紡ぐ。

「全員、夕方には戻る予定だし、そんなに心配することないだろ」

「でも……」

「ティラミスもカレン会長も付いてるから大丈夫だ。安心して待ってろよ」

「うーん……」

 ジュナに引っ張られ、クロトはこの場から離れるのを躊躇っている様子だった。

 二人で一緒に律葉を探すという選択もあるのだが、クロトはまだそのことに気付いていなかった。

 どう言えば、どう行動すればクロトを引き留めていられるか。

 足りない頭を総動員して思考していたジュナだったが、運良く絶妙なタイミングで助け舟が現れた。

「おまたせしました~」

 二人の間に介入してきたのはウェイトレス……ではなく、食欲をそそる香りを放つ料理だった。

 チーズの濃厚な匂い、肉の脂が焼ける音、そして焦げ跡一つもなく綺麗に焼かれたオムレツ。これらを匂って、聞いて、見て、食欲をそそられない人間などこの世に存在しないだろう。

 カウンターテーブルに料理が並べられ、今更ながらジュナはクロトを食事に誘うことにした。

「ほら、料理も来たし取り敢えず食おうぜ? な?」

「そうだね。ティラミスが同行しているなら安心だし、ジュナからの折角の誘いを断るのも失礼だしね」

 クロトはナチュラルに微笑む。

 この不意打ちに近い攻撃に、ジュナは対抗することができなかった。

「っ……!!」

 ジュナは自分の顔面が熱くなっていくのを自覚していた。その熱さは耳にまで伝導し、紅潮しているのは間違いなかった。

 こんな顔を見られたら恥ずかし過ぎて死んでしまう。

 ジュナは自身の変化を悟られぬよう、飽くまでも自然に左手を頬まで持ち上げ、顔を隠す。

 しかし、クロトにとっては不自然極まりない動きだったようだ。

「大丈夫かい?」

 クロトは心配そうに問いかける。

 この気配りの良さもクロトの魅力の一つだ。これまでメンバーが快適に過ごせたのもクロトの気配りあってこそだ。

 勇敢で仲間想い、自己犠牲の精神も持ち合わせている。

 普通の人間には真似出来ない。2000年以上の時を生きた彼だからこそなし得たのかもしれない。

(って、そんなこと考えてる場合じゃねーな……)

 ジュナは一旦深呼吸し、クロトの問いかけにようやく応じる。

「大丈夫って、何がだよ?」

 緊張のせいか、声が少し震えていた。

 ジュナは自分の口からこんな情けない声が出るとは思っておらず、自分でも驚いていた。

 当然、クロトも過剰な反応を示した。

「声、震えてる……? 喉の調子でも悪い?」

 普段の性格からは想像もできないようなか弱い震え声は、クロトの心配性を加速させるのに十分だった。

 ジュナは否定の意を示すために首を左右に振るも、それで納得してくれるクロトではなかった。

「何だか元気もないし、落ち着きもないし、心なしか顔も赤い……。単なる疲労とも思えないし、一度医者に診てもらったほうがいいよ」

「そんなことねーよ」

「無理は良くないよ」

 クロトはその言葉を発すると同時にジュナの肩に手を置いた。

 クロトにとってはごく自然な、単なるスキンシップだった。が、今のジュナにとっては過激なボディタッチだった。

「な……な……」

 服越しにクロトの手の感触が伝わる。兄よりは少し小さいが、それでも大きい男性の手。

「……さわんなよ!!」

 ジュナはクロトの手を払いのける。が、如何せん気が動転していたのか、勢い余ってバランスを崩し、椅子と一緒に床目掛けて倒れていく。

「っ!?」

 今からだと受け身も取れそうにない。顔面から床に激突するコースだ。

 ジュナは運命を受け入れ、重力に身を委ねる。

 しかし、ジュナが床と激突することはなかった。

「危ない!!」

 耳に届いたのはクロトの切迫した声。

 次に感じたのはふわっとした感触。

 ジュナが恐る恐る目を開けると、そこには黒い粒子で構成されたクッションが出現していた。

 どうやらクロトが落下地点に先回りしてクッションを形成したようだ。

 結果、ジュナは黒い粒子のクッションに顔を埋める形で床に倒れ込んでしまった。

「ふぅ……」

 ジュナに怪我をさせずに済み、クロトは安堵のため息をつく。

「……」

 ジュナも顔面の安全が確保され、ホッとしていた。

 もしあのまま激突していたら鼻血は確実。下手をしたら前歯も折れていたかもしれない。

 それにしてもこの黒い粒子はなかなかひんやりとしていて心地よい。

 弾力も程よく、こうして顔を埋めていても楽に呼吸ができる。

 寝具として売り出したら大ヒット間違いなしだ。

 ……そんなことを考えているとゆっくりと黒の粒子は霧散していき、ジュナは地面に片膝をついて着地した。

「やっぱり調子が悪いみたいだね」

 いつの間にかクロトはジュナの正面に移動しており、手を差し伸べていた。

 ジュナは逡巡しつつも結局クロトの手を取り、立ち上がる。

 その際、思わず“ありがとう”と礼を言ってしまいそうになったが、ジュナは頑としてクロトの主張を認めなかった。

「どこも悪くねーよ。つーかさっきのはお前が急に……」

 ――肩に触れたせいだ。

(……なんて言えるかよ)

 単に触れられただけで動揺してしまうなんて、そんなのまるでクロトを過剰に意識しているみたいではないか。

 ……いや、実際は意識しているのだが

 そうだとしても、すこし肌が触れた程度でオーバーリアクションしてしまうような、そんな恋愛耐性ゼロの軽い女には思われたくなかった。

 結果、ジュナはセリフの途中で言葉を止めてしまい、気まずそうに視線をそらしてしまった。

 クロトは深く追求することなく話をすすめる。

「体調の件はともかく、疲れが溜まってるのは事実だろうし、ちょっと部屋で休んだほうがいいんじゃない?」

 流石にこれまで否定すると変に怪しまれてしまう。第一、クロトに心配をかけるのは本望ではない。

 ジュナは素直にクロトの提案を受け入れることにした。

「おう……」

 ジュナは小さく頷く。

 すると、クロトはカウンターの向こうにいるウエイトレスに声を掛けた。

「すみません。この料理部屋まで運んでもらっていいです?」

 ウエイトレスは笑顔で応じる。

「勿論かまいませんよ。一緒にお飲み物もお持ちしましょうか?」

「うん、そうだな……オレンジジュースをデキャンタで頼むよ」

「グラスはお2つで?」

「いいや、一つでいいよ。ありがとう」

 クロトが告げるとウエイトレスは「承りました」と会釈をし、奥へ引っ込んでいった。

「じゃ、行こうか」

「お、おう……」

 何だかその場の空気に流されている気がするが、今何を言ってもどうしようもない。

 ジュナはクロトに手を引かれ、そのまま2階へと移動することとなった。



「……ではごゆっくり」

「ありがとう」

 場所は変わって2階、狩人用の簡易宿泊所の個室にて

 ジュナとクロトはウエイトレスから料理の乗ったトレイを受け取り、室内に足を踏み入れていた。

 室内は狭く、ベッドが部屋の半分を占めている。

 あとあるのは鏡付きの洗面台くらいなもので、まさに休憩用の部屋そのものであった。

 ジュナは室内に入るとすぐにベッドに腰掛け、枕を抱いて壁に背を預ける。

 クロトはトレイをベッドの上に慎重に置き、ジュナに遅れて腰掛けた。

 クロトは早速ジュナに問いかける。

「気分はどう?」

「どうも何も、最初からオレは大丈夫だっての」

 ジュナは枕をギュッと抱き、ぶっきらぼうに応じる。

 まだクロトの顔をまともに見ることができない。意識しすぎているのは自覚しているが、自覚していてもこの感情をコントロールできるかどうかは別問題だ。

 目を逸らしたままのジュナに不信感を抱くことなくクロトは続ける。

「ここ最近目まぐるしかったからね。疲れが溜まってたのかもしれないね」

「……かもな」

 クロトの言う通り、疲れているのは事実だ。

 この数日でいろんなことがありすぎた。目の前に座っているクロトが地球最強の殲滅兵器なんて今でも信じられない。

 味方のままでいてくれれば心強いことこの上ないが、敵に回すと厄介……いや、瞬く間にこちらは全滅だ。

 カレン会長も言っていたが、今はクロトを確実に味方につけるのが重要だ。

 だから私はクロトと親密にならねばならない。

 カレン会長お墨付きの免罪符を手に入れたのだ。だからクロトと仲良くなっても何の問題もない。むしろクロトと仲良くするのは人類を救うために必要なことなのだ。

(仲良く、か……)

 そう言えば、私とクロトはいつから気さくに話せる仲になったのだろう。

 初対面の印象は良くなかったが、ラグサラムでの仕事を終える頃には普通に喋っていたと思う。

 では、いつからクロトの事が好きになったのだろうか。

(……?)

 よくよく考えるときっかけがわからない。いつの間にか好きになっていた。

 そのことに改めて気付いたのはカラビナから退去させられた後、クロトの帰りを待っていた時だと思う。

 あの時は寂しくて胸のあたりが締め付けられるような感覚を得ていた。

 が、港で再会できた時はそんな感覚が帳消しになるほど嬉しかった。感極まって抱きついてしまったほどだ。あれは今思い出すだけでも恥ずかしい。

「~~!!」

 ジュナは恥ずかしさに耐えきれず、脚をバタつかせながら枕に顔を埋める。

 その行動を見てか、クロトはホッとした表情を浮かべた。

「確かに、その様子なら大丈夫そうだね」

「……うるさい」

 ジュナは半笑いしているクロトに言い返し、すぐにその動きを止めた。

 このまま自分の失態を根掘り葉掘り聞かれるのも気分が悪い。

 ジュナはクロトに質問を返すことにした。

「そっちはどうなんだ? 体調とか、記憶の混濁とか……」

「全然問題ないよ。それよりご飯を……」

「ちょ、ちょっと待て」

 あっさりと返されてしまい、ジュナはクロトにストップを掛ける。

 思い描いていた展開とは違うが、当初の目的どおり二人きりになれたのだ。食事しているだけでは勿体無い。

 ……とは言え、具体的に何をするかまでは考えていない。

 とりあえず、できるだけ長くクロトと過ごすことだけを考えよう。

 そんなジュナの取れる選択肢は“会話”以外になかった。

(でも、何を話せばいいんだ……?)

 何か話そうにも話題が全く思いつかない。緊張しているのもあるのだろうが、会話の糸口がつかめない。

 そもそも私は同年代の男子と会話したことが殆どない。

 普通の男子とならそれなりに上手く対応できるのだろうが、想いを寄せている男と二人きりで会話するなんて未知の領域である。

 正直不安ではあるが、ここで手をこまねいているようでは狩人失格だ。

 ジュナは気を取り直すと、これまで狩人として培ってきた勇気と胆力で以って、その未知の領域に足を踏み入れた。

「えっと、あー……その……その服、なんかアレだな。変な感じだな」

 私は何を言っているのだろうか。

 切羽詰まって視界に入っていたクロトの服に言及してしまった。

 七分袖の黒いシャツに黒いズボン。黒自体は珍しくないが、服の材質や質感が私達の物とは明らかに違う。

 滑らかというか何というか……とにかく違和感を覚えたのだ。

 ジュナの言葉を受けてクロトは改めて自分の服を見、小さく笑う。

「これは僕の時代では普通の恰好だったんだけれど……確かに、ジュナには見慣れないデザインかもしれないね」

「そんなことねーよ」

 ジュナは思わず否定してしまった。

 自分で“変な感じ”と言っておきながら即座に否定するなんて、支離滅裂である。

 だが、こうでも言わないと会話が続かない。それほどにジュナは切羽詰まっていた。

 ジュナは会話を維持するために服について話題を掘り進めることにした。

「デザインはともかく、なんつーか、その、似合ってると思うぞ?」

「……」

 ジュナの発言を受けてクロトは面食らった表情を浮かべる。

 この反応にはジュナも同じく面食らったが、すぐにクロトはいつもの穏やかな顔に戻る。

 そして、感心した様子で感想を述べた。

「“似合う”だなんて褒め言葉がジュナの口から出てくるとは……」

「てめえ、オレを何だと思ってんだ……素直に喜んどけよ」

 ジュナは強気で言い返したが、内心ではクロトの意見に同意していた。

 確かに、他人の服装を褒めるだなんて普段の私ではありえない。しかも男に向かってこんなセリフを吐くだなんて……恥ずかしすぎるにも程がある。今すぐにでも自分の舌を切り落としたい気分だ。

 ジュナが葛藤している間もクロトは話を進める。

「そこまで言うなら喜んでおくよ。ま、格闘戦には向かない格好だけれど、今の僕には必要ないからね」

「格闘……」

 格闘というワードを聞き、ジュナは再度クロトの服装を観察する。

 シャツは薄手で襟元はV字にカットされていて、急所を狙いたい放題だ。

 ズボンも明らかに関節の可動範囲が狭そうで高速戦闘に適しているとは思えない。

 グローブもブーツも履いていないし、まったくもってクロトの言う通りだ。

(よし、次は格闘戦について話そうかな……)

 この話題なら二時間でも三時間でも話せる自信がある。

 同じ上級狩人同士、きっと盛り上がるに違いない。

 そんなジュナの目算はクロトの一言によってあっさりと瓦解する。

「褒めると言えば……ジュナ、みんなに“可愛い”って言われてたよ」

「!?」

 ジュナの脳内は一瞬にしてホワイトアウトしてしまう。

 そして、真っ白な脳内に“かわいい”という言葉だけがなだれ込んでくる。

 人は真のパニックに陥ると思考停止して硬直するか、奇行に走るという。

 ジュナは前者であり、完璧なフリーズ状態に陥っていた。

 ジュナが錯乱する一歩手前であることも知らず、クロトは言葉を続ける。

「カラビナで主要メンバーに映像を見せる機会があったんだけれどみんな驚いてたよ。こんな可愛い娘がクロイデルを破壊できるほどの戦闘能力を持ってることにね」

(ああ、そういう……)

 ジュナは気を失う寸前でこちら側に戻ってきた。

 可愛いというのはクロトの主観ではなく、客観的な意見だったようだ。

 可愛いと言われて嬉しいのは嬉しいが、やはりクロトが私のことをどう思っているのかが気になる。

 落ち着きを取り戻したジュナは慎重に言葉を選び、クロトにぶつける。

「クロトはさ、オレのことどのくらい可愛いと思ってるんだ?」

「どのくらいって……いきなり難しいことを聞いてくるね……」

 クロトは視線を落とし、うーんと唸る。

 十数秒後、クロトは太ももを叩いて首を左右に振った。

「正直な話、僕には判断しかねるよ。……でも、ちょっとお洒落して女子っぽく振る舞えば確実にリリサやカレン会長くらいのレベルには達すると思うよ?」

「……」

 ジュナは再び固まる。が、クロトはこれを怒っているのだと勘違いし、続けざまにフォローの言葉を送る。

「ごめん!! 普段はお洒落してないとか野蛮だとかそういう意味じゃなくて、僕の個人的な見解というかアドバイスと言うか……」

「……のか?」

「はい?」

「お洒落してこの性格を直せば可愛くなれるのかって聞いてんだよ!!」

 急変したジュナに慄きつつ、クロトは応じる。

「あ、うん。多分……じゃなくて、間違いなく魅力的な女子になると思うよ。僕は今のままのジュナでも十分に可愛いと思ってるけど……」

「ひふっ」

 ジュナはいきなり変な声を発すると、慌ててクロトに背を向ける。

「え? いまなんて」

「なんでもねーよ」

「でも……」

 クロトにはジュナの言動が理解不能だった。

 そんな情緒不安定なジュナが心配になり、クロトはジュナの顔色を窺うべくベッドの上を移動する。

 しかし、気配を感じたジュナはクロトの接近を許さなかった。

「来るな!! あとこっち見んな!!」

 ジュナは両腕を交差させて顔を隠し、クロトを遠ざけるべくキックを放つ。

 このまま暴れられるとせっかくの料理がひっくり返ってしまう。

 そう思ったクロトはおとなしく引き下がることにした。

「わかったよ。……でも食堂でも様子がおかしかったし、一度正式に検査を……」

「……黙れ」

 原因究明を図りたいクロトだったが、これ以上干渉すると余計に悪化すると判断し、追求をやめた。

 ぶっきらぼうな物言いとは裏腹に、カレンは感情を抑制するのに精一杯だった。

(なんだよぉ……クロトの野郎、わざとか?)

 ジュナは赤面しており、耳の端まで真っ赤に染まっていた。

 原因は言うまでもない。

 ……カレン会長に焚き付けられたとは言え、上級狩人である自分がここまでうろたえる状況になるとは思ってもいなかった。

 やはり恋とは恐ろしいものだ。

 本来なら私がクロトを籠絡せねばならないのに、今のこの状況は全く逆である。

 完敗といって差し支えないほどだ。

 敗北感やら自己嫌悪やら胸が疼く感覚を得ていると、クロトが不意にベッドから立ち上がった。

「それじゃ、僕は隣の部屋にいるから、何かあったら壁でも叩いて呼んでね」

「あ……」

 まだ一緒にいたい。が、そんなこっ恥ずかしい事を素直に言えるわけもない。

 言葉を待っているクロトに対し、ジュナは一息おいて告げる。

「お前も疲れてんだろ? オレのことは本当に心配ねーから、少しでも寝とけよ」

「お気遣いどうも。じゃあね」

 クロトは軽く手を振ると、静かに部屋から去っていった。

 クロトがいなくなり、緊張状態から脱したジュナは重いため息を吐き、ベッドの上にあぐらをかいて座る。

 ベッドの上には先程食べそこねた料理が置かれており、デキャンタにはオレンジジュースが入っていた。

 ジュナはデキャンタを手に取るとオレンジジュースをグラスに注ぎ、一気に飲み干す。

(一応“可愛い”とは思ってくれてたんだな……)

 二杯目を注ぎつつ、ニヤけ顔を浮かべるジュナだった。


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