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塩鮭の戦士  作者: 藤本角
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【屈辱】

 いっぽう、また別の場所ではミタラシオサムが今まさに毒針攻撃に苦しんでいるところだった。

 敵は蝶布フェスター学園の牧、タジンコタツオだった。

 ブリーフ一枚姿のタツオが、毛むくじゃらの全身の体毛を針状にしてピュンピュン飛ばしていたのだった。

 刺さった針だらけで満身創痍のオサムは長いノドチンコをダラリと地面に垂らし、息も絶えだえフラフラになっている。そんなオサムに対してタツオはさらにプチプチとこまかな針を次々に飛ばしていき、大量の針が刺さったオサムはとうとう思わずその場に崩れ折れてしまった。


「これ、毒針やんけ……コラ」


 ちょうどそこに、流れ弾のようにピアスヘッドの七色のつるピカハゲ○光線が飛んできた。

 光線は背後からタジンコタツオの体を貫いた。

 タツオはものもいわずバッタリその場に倒れた。


「ギャハハハハ! ハハ、ハ……」


 狂ったように笑いながらあたりかまわずつるピカ○○丸光線をまき散らしていたピアスヘッドだったが、とうとう光線も体力も尽き果て、その場にぐったり座り込んでしまった。

 その隙をつかれ、敵の群衆に覆い被され袋叩きの目にあわされた。それ以降ピアスヘッドの姿を見た者はいなかった。


 オサムはといえば、毒のせいで薄れゆく意識を保つのが精一杯に見えた。力を振り絞りなんとか立ち上がろうとするのだが、四つん這いになるのが関の山で、体を起こそうと力を入れた刹那、腕の力が抜け、転ぶようにコロンと仰向けに倒れてしまい、そのまま一切の動きが止まった。


「兄貴! あそこにも学園牧がいます!」


 力尽きたオサムとタジンコタツオを目ざとく見つけたスキンが、指を差しながらヂョーに告げる。


「おお、ふたりとも学園牧じゃねえか」


 ヂョーが嬉しそうな顔で目を輝かせると、子分を引き連れ、まずタジンコタツオのもとに歩み寄っていった。


 タツオはブリーフ一枚の毛むくじゃらなので、そんな男のブリーフを寄ってたかってずり下ろすと、とうぜんのごとくタツオは全裸となった。

 しかも尻じたいも体毛が密生しているので、これにはさすがの一同も顔をしかめた。


「あれっ? こいつなんにも挟んでないぞ」アフロが不思議そうにいう。


「もっとよく見てみろよ」


 アフロはしかたなく、若干目をそらしがちに、まるで汚いものにでも触るかのようにタジンコタツオの尻の肉をグイッと広げ、奥まで丸見えにさせた。


「あ、あったあった」おそるおそる視線を持っていき、タツオの尻の割れ目に挟まっているものをつまむように取り出す。


 ピスタチオだった。

 アフロはそいつをじっと見つめながら、


「さすがにこんなの挟む気にはならねえな……」タツオの毛むくじゃらの尻と見比べながらテンション低くつぶやくとポイッとピスタチオを捨てた。


「おい、次はあいつだ」次にヂョーはオサムに目をやった。


 立ち上がると、近づいていく。体を蹴って裏返す。

 オサムは毒針のせいで死んでいるのか失神しているのか、ともあれ意識のない状態のようだ。


 あとの三人がやって来て、取り囲むと、モヒカンが中腰になり、一気にズボンとトランクスとスルリとずり下ろした。

 とうとうミタラシオサムもまた尻を丸出しにさせられてしまった。


「なんだよこれ」モヒカンがオサムの尻の割れ目からつまみ上げると、汚いものでも扱うかのようにヒラヒラさせた。


 くしゃくしゃになった封筒だった。


「寄越してみろ」ヂョーがひったくるように奪うと、雑に封をビリビリ破き、折り畳まれた一枚の紙を取り出した。


 そこには筆文字で、


<心頭滅却すれば糞もまた芳し>


 と書かれてあった。


 文面から顔を上げたヂョーは、


「おい、こいつの能力はなんだったかな」


「……さあ、なんでしたっけ」


「こいつ、寄与瀬スピュータム学園のミタラシオサムですぜ」


「思い出した。兄貴、こいつは必殺のノドチンカーですよ」スキンが大声をあげた。


「ああ、ああ、ノドチンカー。そうだったな。なんだよつまらん。ノドチンコびろ~んなんてみっともない能力なんているかよ。チッ。よくも学園牧を名乗ってたもんだ。こんなやつぁどうでもいい。行くぞおい」


 ヂョーはオサムが挟んでいた紙をくしゃくしゃに丸めると、これもピスタチオと同じくそのへんにポイと捨てた。そうして子分を引き連れその場から離れた。


 あとには屈辱的な姿をさらされたままのミタラシオサムとタジンコタツオの姿がそこに残されたが、周囲は相変わらずデタラメな合戦が続いていたので誰もふたりに気を止める者はいなかった。



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