表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

それぞれの、愛

作者: 新井瑠七

 「うちの子、私の言うことなんて、もう全然聞かないのよ。」

 「そんなこと言ったら、うちの娘なんて、もう彼氏がいるのよ。」

 「へぇ、そうなんだ。」


 久々に参加した同窓会、近況を、皆、競い合うように語り合っていた。

 その勢いに押され、予定より帰りが遅くなってしまった。


 最寄り駅、駅前から離れると、辺りはもう、すっかり暗くなっていた。

 きっと、お腹を空かせているに違いない・・・


 私は帰り道を急いだ。


 案の条、家の近くまで来ると、息子が玄関の外で私の帰りを待っていた。

 私を見つけた息子は、こっちに向かって大きく手を降り、叫んだ。


 「おかえりーー!」

 「ごめん、ごめん、遅くなっちゃって。」


 そう言って走りだした瞬間、私は何かにつまずき、思いきり転んでしまった。


 「痛ったーーい。」


 膝をさすりながら立ち上がろうとする私のほうに、息子はとぼとぼと近づくと、大丈夫?と聞いてはくれなかった。


 そのかわり、夜空を見上げ、つぶやいた。


 「たいようはどこにいっちゃったのかな?いまがいっちばんしつようなのに・・・」


 私は膝の痛みと、笑い出してしまいそうなのをこらえ、息子の肩をいつもより強く抱くと、息子と一緒に夜空を見上げ、言った。


 「そうね。太陽がいてくれたら、母さん転ばなくてすんだのにね。」


 今年、二十歳の誕生日を迎える、そんな息子を、私はこころから愛している。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ