それぞれの、愛
「うちの子、私の言うことなんて、もう全然聞かないのよ。」
「そんなこと言ったら、うちの娘なんて、もう彼氏がいるのよ。」
「へぇ、そうなんだ。」
久々に参加した同窓会、近況を、皆、競い合うように語り合っていた。
その勢いに押され、予定より帰りが遅くなってしまった。
最寄り駅、駅前から離れると、辺りはもう、すっかり暗くなっていた。
きっと、お腹を空かせているに違いない・・・
私は帰り道を急いだ。
案の条、家の近くまで来ると、息子が玄関の外で私の帰りを待っていた。
私を見つけた息子は、こっちに向かって大きく手を降り、叫んだ。
「おかえりーー!」
「ごめん、ごめん、遅くなっちゃって。」
そう言って走りだした瞬間、私は何かにつまずき、思いきり転んでしまった。
「痛ったーーい。」
膝をさすりながら立ち上がろうとする私のほうに、息子はとぼとぼと近づくと、大丈夫?と聞いてはくれなかった。
そのかわり、夜空を見上げ、つぶやいた。
「たいようはどこにいっちゃったのかな?いまがいっちばんしつようなのに・・・」
私は膝の痛みと、笑い出してしまいそうなのをこらえ、息子の肩をいつもより強く抱くと、息子と一緒に夜空を見上げ、言った。
「そうね。太陽がいてくれたら、母さん転ばなくてすんだのにね。」
今年、二十歳の誕生日を迎える、そんな息子を、私はこころから愛している。