第9話:〜光の過去〜
ここからは大分、シリアスです。
「父さん、母さん早く早く!」
彼がまだ十三歳の頃。
中国に家族揃って旅行しに来てた。
彼、夢村 光ははしゃいでいた。
まだ、このころは無邪気な光だったのかもしれない。
「お〜い、待ってくれよ〜〜」
「あらあら、はしゃいじゃって♪」
前者は光の父、夢村 茂
後者は光の母、夢村 夏樹である。
「ははは、二人共遅い遅い」
この時はまだ知らなかった。彼らに人生最大の不幸がおとずれるとは………。
ホテルにチェックインした彼らはとりあえず荷物を置いた。
疲れた光は即座にベッドに横たわり、うとうとした。
「じゃあ光。俺と母さんはもう一回街に行くけど光は行くか?」
「いい〜〜〜疲れた」
「だらしがないなーーまあいいや。じゃあちゃんと、ここで大人しくしてるんだぞ。わかったか?」
「Yes、Christ」
「なに言ってるかわからんが、行ってくるぞ」
光はコクりと頷き寝てしまった。
ドアの閉まる音だけがその部屋に鳴り響いた。
それは、これからおこる不幸の始まりだったのかもしれない。
暗闇の中、光は目を覚ました。
あれ………二人共まだ帰って来てないんだ。
今はまだ、夜の七時。
そんなにまだ心配する時間帯じゃないので光は、遅いなーとか思いつつまた眠ってしまった。
「ん………、はぁ〜よく寝た」
光は周りを見渡す。
まだ、帰って来てない。どうなってるんだ?
今は夜の十一時。
そろそろ不安になってきた。
何故帰ってこないのか。何故連絡もなにもないのか。
「なんでだ? なんで父さんも母さんも帰って来ないんだ………」
不安ばっかりが心に積もる。
おまけに、この静寂。
「とりあえず、テレビでもつけよ」
そこにはニュースが流れてた。
どうやら、どっかのマフィアが銃撃戦をおこなったらしい。
その中には流れ弾にあたった二人の日本人がいるらしい。
光に一つの思考がうまれる。
絶望的な思考が………。
まさか、父さんと母さんが流れ弾にあたった日本人? そんなわけない。日本人は一億人以上いるんだ………。
光がしばらく思考をめぐらせてると、ドアの扉がノックされた。
ノックしたって事は従業員かなんかだろう。
「どうぞ」
ノックした人は日本語がわかるのか、マスターキーを使って入ってきた。
まだ二十歳くらいの青年。
「どうしたんですか? こんな夜遅く」
「哀しいお知らせがあります」
「哀しいお知らせ?」
「はい、あなた様のご両親が亡くなりました」
「うそ………嘘だろ!」
そんな…………父さんと母さんが死ぬなんて………嘘だ嘘だ、嘘だッ!!!
「そして、ご両親が亡くならわれた原因はマフィアの銃撃戦に巻き込まれたからです」
その話を聞いた途端にある感情がマフィアに芽生える。
憎悪、怒り、悲しみ………すべての負の感情が絡み合い交差する。
光は絶望にうなだれた。
目の中の光りが失う。
両親がいつまでも光り輝くようにと付けた名前、光。
それが失う。
自然と涙が込み上げてくる。もう限界だ……
「あの、これからどうするんですか?」
「う、う、グスッ」
「ここから北に山があります。そこでは自然も豊富ですし食べ物もあります。なにより、僕の師匠がいます。地図を渡しておきますんで行ってみて下さい。きっと力になってくれるはずです」
そう言うと青年は光の座ってるベッドに一枚の紙切れをおいた。
光はまだ泣き続けてる。
青年は言った。
「いつまでも泣いてたら始まらない。前を見ろ。進め。過去は話す事はできても、戻れない………師匠が僕に言った言葉です」
青年は一人で語り始める。
自分の過去を。
五年前、両親を光と同じように失った事。
絶望に浸ってる時、師匠が拾ってくれて心身、ともに清めてくれた事。
そして今の自分がいる事。
「だから、君も諦めないで頑張るんだよ。わかった?」
光は頷く。
青年はよし、というと立ち上がりドアの前で止まった。
「あぁ。師匠には寸 筰四からと、伝えておいてくれ。元気にしてるって」
「わかりました」
「じゃ、頑張るんだよ」
それっきり、部屋には静寂がおとずれた。
明日はその、寸さんの師匠の所にでも行ってみるか。
そして光は深い眠りにおちた。
第9話:〜光の過去〜を読んでいただきありがとうございます。三人称で書いてみました。一人称も混ぜてみたんですけど変でしたか? すいません。光の過去は当分三人称でいくと思います。これからも居候はヴァンパイア!をよろしくお願いします。