第44話:〜寿さんの家にて〜
「レナ! 早く雨戸閉めてくれ!」
「分かってるよ!」
「分かってるなら、さっさと動け! ほら早く! そんなんじゃ太るぞ!」
我が家で慌ただしく動き回る。
アロハ〜〜光です。
『アロハ』って、おはようとさよならの意味があるらしい。
まぁ、そんな豆知識は置いといて。
何故俺達は慌ただしく動いてるのかと言うと、今、外は台風が通ってる真っ只中。
んでもって、雨戸を閉め忘れてて今、閉めてる訳だ。
「ヒカル! 閉めたよ!」
「よし! こっちもだ。とりあえず、一段落だな」
冷蔵庫から麦茶を取ってちゃぶ台に置く。
そして俺はちゃぶ台の前に腰を落ち着かせる。
窓際は、雨で少しだけ濡れてる。俺の服も、雨で所々に染みが出来ている。
「危なかったね。ヒカル」
「あぁ。もう少しで窓際がビショビショになるとこだったぜ」
俺はため息をついた後に麦茶を一回口に含む。
はぁ〜〜仕事の後の一杯はいいねぇ〜〜。身体に水分が浸透していくのがすぐに分かるぜ。
と、そこに一本の電話が鳴る。
「なんだ?」
俺は仕事が終わった後の重い腰を持ち上げて受話器をとる。
「はい。もしもし、夢村ですけど」
「あ、光さん?!」
「寿さん? どうしたんですか?」
電話は寿さんからだった。どうしたんだろう? 電話してくるなんて珍しい。
俺は電話の配線を指にクルクル巻いて、次の言葉が出るまで遊んでた。
これ意外と楽しいんだよな〜。
「あの……今から家に来ていただけませんか?」
「へ? なんで?」
いきなりの、ご招待。
嬉しいが今は台風がこの都市をストライクしている。
寿さんの家も確か弟切荘の隣りだ。
行くには三分も掛かからない。
だが、さっきも述べた通り台風がストライクしている。ど真ん中直球ものだ。
「と、とにかく来て下さいね!」
ツーツーツーツー
いきなり切られたよ。
ん〜〜まぁ、しょうがない。なんか、切羽詰まってた感じだったし、行くか。
「レナ。俺、寿さんのとこ行くけどお前はどうする?」
「行く! って言いたいけど、観たい昼ドラあるから〜」
お前は何処ぞのオバハンか!
俺は心のなかで呟く。
まさか、俺の性格が移ったか? いや、まさかな。
靴を履いて玄関のドアを開ける。
ビュオオォォ……ア〜レ〜。
バタン。
ものすげぇ、風力。
しかも、誰か飛ばされてたし。
何だったんだ? 今のは。
俺は気を取りなおしていざ、出陣。
ドアを開ける。やはり凄い風力だ。
俺は階段を降りて、マンションの敷地内から出る。
そして、寿さんの家に向かう。
もちろん、傘無しで。走って。
寿さんの家のチャイムを鳴らす。
「寿さ〜ん?」
「は〜い。今開けま〜す」
ガチャっとドアが開いて出て来たのはネグリジェ姿の寿さん。
ロングヘアーがボサボサだ。
「寿さん。寝起きなんですか?」
「いえ、いつも家ではこうですよ?」
しられざる実態!
普段マジメな寿さんがいつも、こんな格好なんて。ある意味おいしいけど。
「あ、早く入って下さい」
手招きされて寿さんの一戸建てに入る。
うわ〜〜女の人の家に入るのは、師匠の家に入った時以来だ。
寿さんの家に入ると、玄関にはなんかの花が飾られており、清潔感が漂っている。
こういうところは、寿さんらしいな。
と……感心してるんじゃなくて。なんで、呼んだか聞かないと。
「寿さん。一体全体、なんで俺を呼び出したんですか?」
「それはですね……」
寿さんは廊下の左側にある、ドアを開ける。
すると中から先日、寿さんが拾った子犬が出てきた。
それを寿さんは胸元に抱く。子犬は舌を出して嬉しそうに尻尾を左右に振っている。
「この犬と遊んでいただけませんか?」
「へ?」
「実は私、内職をしなきゃいけないんですが、この犬淋しがり屋で、時々遊んであげないと鳴いちゃうんです。だから、可哀相で……てな事でお願いします。リビングは自由に使ってよろしいですよ? 遊び道具はあそこにあるので」
ボールやなんやらが入った箱を指差した後、俺に子犬を抱かせて、自分はさっさと上へ行ってしまう。
もはや、強制してんじゃん。
子犬は俺を舌を出しながら、見上げている。
よく見ると今は可愛いが将来は凛々しい顔立ちになりそうだ。
その子犬には首輪に『ブレンド』と書いてあるから、寿さんが名付けたものだろう。
う〜ん、雑種だから『ブレンド』か。さりげ、合ってるな。
俺はまたもや感心してしまい……って、どうすんだよ! コレ!
そんな俺の苦悩を知らずか前足でせがんでるように、つついてくるブレンド。
これは、遊ばなきゃいけないのか?
「あ〜〜わっかたよ。遊んでやればいいのか?」
たまたまなのか、それとも分かってるのか、頷くブレンド。
俺はブレンドの頭を撫でてやり、リビングへお邪魔する。
「意外と殺風景なんだな」
家具はテレビと机と本棚、後はごみ箱。他は新聞紙が机に無造作に放置してあり、ティッシュや生活用品ばっかり。
しかも服が所々に脱ぎ散らかしてある。
おっさんの家か? ここは。見栄えがいいのは玄関だけ?
「まぁ、いいや。ほら、ブレンド」
俺は床に座り、箱の中からゴムボールを取って投げる。
すると、ブレンドは勢いよくゴムボールに突進する。
ゴムボールは壁に当たってから、ブレンドの顔とは反対の方向にバウンド。
ブレンドは床がつるつるして止まらなく、壁に激突。それでも、すぐに反転してゴムボールを見事、口にキャッチ。
「お〜偉いな〜」
ブレンドは俺の方へ戻ってきて口に加えていたゴムボールを目の前に落とす。
唾液でびちゃびちゃになったゴムボールを人差し指と親指で掴み、また投げる。
それを幾度か繰り返すとブレンドは疲れたのかもしれない。俺の目の前で欠伸をした。
「何だ? お前眠いのかぁ?」
ブレンドは遂に座ってしまい、前脚を枕に眠ってしまった。腹は規則正しく、上下する。
眠っちまったな〜。どうしようか。
俺は辺りを見回す。
そこである名案が。
よし! いっちょ、やってみるか!
第44話:〜寿さんの家にて〜を読んで頂きありがとうございます。更新が遅い方になってしまいましたね。出来れば日曜日にしたかったのですが……。後、アクセス数が26000件を越えましたのでここに報告。誠にありがとうございます。では、これからも居候はヴァンパイア!をよろしくお願いします。