第31話:〜デパートで大奮闘?〜
「ここでいいのか?」
「あぁ。ここが新しくお母が設立した、デパート。MiraclePocketだ」
「なんか、RPGで出てきそうな名前だな」
「名前の由来は辞書二回引いたら、たまたまその言葉があったかららしい」
適当だな、おい。
近くの駅から電車に乗って、10分の所にこのデパートはある。
そして、俺の感想。
デカい。
このデパート、デカい。
高さはそこら辺のデパートとは変わらないのだが、横幅がそこら辺のデパートと比べて二、三倍ある。
例えて言うなら、東京ドームぐらいだ。
なんかの工場か? ここは。それとも、軍事基地か?
俺は心にそんな事を思いつつも、幸治の母さんに感謝する。
だって、半額! 半額って事は主に、食品を買いまくって赤字脱出だぜ!
だけど、問題がある。
デパート、開店前なのに物凄い数の客がいる。
これは久々に激戦になりそうだ……
「なぁ、光。オレは主に何を買えばいいんだ?」
彰が近くの女性をナンパし、頬に手形が付いたまま戻って来た。
こりゃ、失敗したな。
それはさておき、実は誰が何を買うのかを俺達は予め打ち合わせをしてある。
「確か彰は、日常品。ティッシュとかトイレットペーパー………あ、後、アロマキャンドルも何個か買っておいてくれ」
「よし、わかった!」
彰に一万円渡す。
何故、アロマキャンドル? と思った人がいるかもしれないので、説明を。
俺じゃないです。
アロマキャンドルをよく使うのはレナです。
なんでも、一週間に一回はアロマキャンドルを点けながら寝ないと次から寝れなくなるそうです。
おかしな話しだな、全く。
「光さん。確認なんですけど私は何を買えば……」
「あぁ、寿さんは食品。主に、野菜類」
「わかりました」
俺は寿さんに一万円渡す。
「ヒカル〜ボクは何を買えばいい?」
「お前は……米、飲み物、後は……魚類だな」
「イエッサ〜〜」
レナに一万円を渡す。
「幸治は……」
「わかってる。俺は、食品の肉類を買えばいいんだろ? 時間が余ったら、待機」
「そうだ」
幸治に一万円を渡す。
その後、俺は四人を見る。そして、考える。
このメンツ……寿さんが危なそうだな。
俺は寿さんの加勢に行った方がいいかな?
誰に聞く訳でもないけど、疑問文にしてみた。
「あ、夢村。そろそろ開店だぜ」
幸治に言われ、腕時計を見る。
時刻は四時五十八分。
俺は身震いする。
いよいよだ……
「皆、頼んだぜ」
「あぁ、頼まれた」
「了解」
「任せて♪」
「出来るだけやってみます」
俺は腕時計を再度見る。
よし、開店だ。
デパートのドアが開き、他の客と共に店内へなだれ込む。
「じゃ、皆! 後で!」
返事はない。
この雑音で返事が消されてるのか……ま、いいか。
店内へ入って、すぐ右横にある階段を降りる。というか、手摺りを滑る。
この、店内の構造は
B1 食品売り場
1F 電化製品
2F 日常品
3F 紳士服
4F 子供服
5F 婦人服
6F ゲーセン
俺はそのB1……食品売り場に向かってる。
やはり、寿さんが心配だからだ。
他の三人は肉体的にも精神的にも頑丈だけど寿さんは頑丈じゃないからな。
俺はB1に行くと、寿さんを捜す。
何処だ?
周囲を見回す。
すると、野菜の激安セールという所に寿さんはいた。
寿さんが取ろうとしてるのはキュウリやピーマン等、手の平サイズの詰め合わせ。
うわ〜〜彰が見たら鼻血出しそうだな。
いつも笑顔の寿さんだが、今は一生懸命に手を伸ばして野菜の詰め合わせを取ろうとしてる。
そこが、妙に愛くるしい。
と、こんな変態みたいな事、思ってないで助けてあげるか。
「大丈夫? 寿さん」
「あ、光さん」
「あんまり疲れてるなら、休んだ方がいいよ」
寿さんは汗びっしょり。
飲み物とか飲んどかないと、いつ倒れるか分かったもんじゃない。
それに、結構クーラが効いてるから風邪ひくかもしれないし。
「大丈夫です」
「いや、全然大丈夫じゃないと思うけど」
「大丈夫……くしゅん」
やっぱり……風邪ひく可能性があるな。
「ほら。俺は無理してまで、手伝ってもらおうと思ってないから、休もう?」
俺は着てたアロハシャツを寿さんに羽織らせる。
「でも……」
「いいから。後は俺がやっておくから……ね?」
「うぅ……わかりました」
寿さんは近くにあったベンチに腰掛ける。
さ〜〜て、じゃあ久しぶりに暴れさせてもらいますか。
俺は野菜の詰め合わせの所に行き、他の客の脇を通り抜けて、最前線に行く。
「はい、没収」
俺は両手に詰め合わせを二個ずつ持ち、一旦ベンチに戻る。
ベンチに座ってる寿さんが驚きの目で俺を見ている。
「どうした?」
「え? あ、光さんは凄いなぁ〜って」
「なんで?」
「だって、あんな大勢の人の中から簡単に取ってくるんですから」
「あ〜慣れだよ慣れ」
俺は持ってた、詰め合わせを寿さんに渡す。
「じゃ、そろそろ俺は他の奴らもどんな状態か見てくる」
「あ、はい」
「気分が戻ってきたら、無理をしない様に頑張ってくれたら嬉しい。今日の晩御飯は豪華にするから」
「はい。楽しみにしてます」
「じゃ」
俺は階段を、今度は上る。
目指すは二階。
彰が心配だ。どんな事をやらかしてるか別の意味で。
二階に到着。
彰を捜す。
と、ここでアロマキャンドルが売ってる場所で彰を発見。
珍しく、彰は何もやらかしてない。しかも、ティッシュやトイレットペーパはもうGet済みである。
ここは、コメディー的になんかやらかしてると思ったのたが……フラグがズレたか?
「おう光。ちょうどいい時に来た」
俺に気付いたのか、こっちに来る。
ん?
彰の頬にはもう一つの手形。
「どうした? その顔」
「あ、開店した後、少しだけナンパしたら打たれた」
なんか、やらかしてました。
よかった。台風が来なくて済む。
「あ、そうだ。光」
「なんだ?」
「アロマキャンドルって、いっぱいあるんだけど……どれを買えばいいんだ?」
彰が指差した棚には、数多くのアロマキャンドル。
「レナは確か、ラベンダーの香りが好きだったような……」
「おう、そうか……ってなんで? アロマキャンドルはお前が使うんじゃないの?」
「違うって。先程、読者様に説明したばっかりだろ」
「お前の心情なんか知るか!」
「とにかく、買っておいてくれよ。アロマキャンドルは十個くらい」
俺はそう彰に告げると、またB1へ。
次は幸治を捜す。
おそらく、幸治は大丈夫だろうが念のためだ。
幸治を見つける。
「幸……いっ!」
俺が幸治の名前を呼ぼうとした瞬間、幸治は胸元に手を入れて銃を出そうとする。
その時の俺は自分でも驚く位、早かった。
幸治の背後を取り、銃をしまわせて一旦、戦線離脱。
「夢村か、どうした?」
「『どうした?』じゃねぇだろうが! 何、銃を取り出そうとしちゃってんだよ!」
「大丈夫だ。誰にも発砲しない。ただ、威嚇射撃をしようとしただけだ」
「その前に銃は犯罪だ!」
こいつには法律という言葉が腦にあるのか?
「とりあえず、銃は止めろ」
「ちっ、わかったよ」
「じゃ頼むぜ」
俺は幸治を残して、魚コーナーに行く。
それにしても、危なかった。俺が幸治の所に行ってなければ犯罪がおきてるところだった。
そんな安堵のため息をつきながら、レナを捜す。
と、マグロのセリをやってる所にレナを発見。
「どうした?」
さっきからレナはオロオロしてばっかり。
「あ、ヒカル〜」
「だから、どうした?」
「どうやって、やったらいいかわからないよ〜〜」
なんだ、そんな事か。
「ん〜〜じゃあ、俺に任せてみろ」
新しいセリが始まったので、参戦する。
商品は中トロ。
店員さんが開始時の値段を言う。
ふむ……300円か……安いな。
『500円!』
『550円で!』
色々な人がどんどん、値段を上げていく。
さて、この場合はどうしたらいいか? 簡単。
店員の供給価格を読み取ればいい。
普通のセリと違って、マグロとか売る時は店員が売りたいと思った人に売るからな。
だから、こういう時は高くもなく、安くもない値段を言うのが1番。
「1500円で!」
俺は思い切り声を出す。
他の客の視線が俺に集まる。
勿論、店員の目も。
集まるのも無理はない。
だって、高校生らしき人物がこんな事をしてるのだ。驚かない訳がない。
そこがチャンスなんだけど。
視線が向く事によって、一時的にセリが停止するし、なにより店員が俺に気付く。
そして、店員が物好きな人だと
「よし、1500で売った!」
こうやって手に入れる事が出来る。
若さを使った勝利だぜ!
「ヒカル、凄いね!」
「普通なんだが……」
まぁ、そんなこんなな調子で、時は流れて。
「いや〜〜皆のおかげで当分買い物に行かなくて済む。本当サンキュー」
今は俺の家に皆が揃ってる。
そして、ちゃぶ台じゃ小さいのでテーブルを出した。
その上にはご馳走。
「皆、これは俺からの礼だ。食べてくれ」
「ヒカルって、本気出すとこんな凄い料理作れるんだ」
「これって、中華フルコースみたいだな」
「光さん、美味しいですよ♪」
口々に、皆は感想を漏らす。
作ったかいがあった。
ま、材料は皆が買ってくれた分なんだけど。
ん? そういえば今日、俺ってあんまり奮闘してない?
……………しくじった……
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