第24話:〜筋肉番付?〜
放課後。
それは、生徒達が一日の疲れを癒す時間。
友達とゲーセンに行ったりだとか一人、家でリラックスしてるとか……俺もその中の一人になるつもりだった……
「で、これはなんだ?」
「見たとおりだ」
「そういう意味じゃなくて!」
俺は幸治に問う。
俺は今体育館に居る。
そして目の前には、某筋肉番組でお馴染みの蝶デッカイ……いや、超デッカイ跳び箱があった。
「この跳び箱はなんなんだって聞いてるんだ!」
「これか? これは某筋肉番組に出てくるモンスターボック−−」
「よし、わかった。わかったから著作権に触れないようにしてくれ」
事の発端は昼休み。
「昨日さ〜〜テレビで某筋肉番組を観たんだけど、俺達もやってみねぇ?」
幸治が俺に聞く。
何を言っているんだ? こいつは。あれか? 最近はテレビに影響される人達がいるけどこいつもその部類か?
俺は幸治に冷たい視線を向ける。
「まあまあ、そんな冷たい視線を向けるな。ただ、俺は某筋肉番組みたいなのをやりたいだけだ」
「それがヤバい」
「いいじゃねぇか。やろうぜ」
「何時?」
「放課後。今日は部活が無い日だから体育館を貸し切って−−」
「却下。労働力の無駄だ」
ったくよ〜〜そんなんで、貴重な放課後を無駄にする訳にはいかない。
しかも、問題点がある。
「それに、用具はどうすんだ? 参加する人は?」
「う〜ん」
ほら、こんなのやる奴なんていないんだ−−。
「お、光と幸治。なんの話しをしてんだ?」
厄介者、発見!
「それがさ、某筋肉番組の真似をしたいんだけど人数が足りなくて」
「そういう事か……」
彰が考えこむ。
俺はここで嫌な予感がする。彰が『オレも入る』って言うのは目に見えている。だから他にもっと、本能が危険だって信号出すくらいの。
「おう、お前ら何してんだ?」
後ろからドスのきいた声。
この声はまさか……
俺は恐る恐る、振り返る。
「げっ、鬼塚!」
「『げっ』って何だ? 俺がここに居ちゃあ悪いのか? ん? それと、鬼塚先生だろ? え? コラ」
「いえ、滅相もございません。鬼塚先生」
「よし、それでいい。というか、お前ら何の話しをしてたんだ?」
鬼塚が俺達に聞く。
その問いに、幸治が説明する。
「俺達、某筋肉番組の真似をしてみようと思ってたんですが人数が足りなくて……」
「そういう事か。なら、俺も入ってやるよ」
なんですと? 鬼塚、今入るって……
そっか……さっきの嫌な予感はこういう事か。
ていうか、鬼塚入ったらやべぇーー死ぬって〜〜の。
「暇つぶしになるしな」
暇つぶしで殺されたらかなわん。
そして俺が頭を抱えてる時にまた悩みの種。
「ヒカルぅ、何してんのぉ?」
今度はレナか……。
ちぃ、次から次へとまったく!
「あ、レナちゃん♪俺達さぁ〜某筋肉番組の真似をしようとしてるんだけどレナちゃんもやる?」
彰がレナに言う。
さすがにそれはないだろう。レナは仮にも女の子だぞ? そんな野蛮な事は
「うん。やる♪」
します……。
「よし! 5人程集まった事だし放課後に体育館集合だな」
『おーー!!』
ええぃ! どうにでもなれぇ!! ヤケだヤケ!
俺達は放課後に体育館で集合する約束をした。
てな訳で現在に至る。
時刻は四時十七分。
普通なら家に帰宅してる時間である。
ここ体育館では、俺、彰、幸治、鬼塚、レナ、寿さんが居る。
尚、寿さんは観客だ。
では、ここで話しの始めに戻ってみよう。
俺の目の前にはさっきも言ったとおり、超デッカイ跳び箱がある。
「何そんなに驚いてるんだ?」
幸治は首を傾げる。
俺は跳び箱を指差しながら問い詰める。
「あんな物どっから持ち出してきたんだッ?」
「あ〜〜そうか。お前知らないのか」
彰が横から顔を出してくる。
「何がだよ」
「幸治、大沢グループの社長さんの息子なんだよ」
「は?」
大沢グループ。
家電製品、食品、ブランド等、色々な物を社会に出している最強の会社だ。年間の売り上げは、一兆円を越えるだとか……。
「ついでに、言っとくけど大沢グループを纏めているのは幸治の母さんだ。父さんは軍人の大佐をやっている」
彰は平然と言っている。
幸治は照れ臭そうに、頭をかいている。
俺は顎が外れるんじゃないかの勢いで口を開けている。
「そうか………だからこんな超デッカイ跳び箱を持ってきても大丈夫だったのか……ってちっがーーーーう! 明らかに現実離れしすぎだろ! なんの権限でこんな跳び箱持ってこれたんだよ!」
「金で買収した」
幸治は平然かつ単純に言った。
「お金をそんな風に使っちゃいけません」
「いいんだよ。さぁグタグタ言ってないで始めようぜ!」
早速、跳び箱の周りにマットをひく。そうしないと、頭ゴッチン、はいサイナラだからだ。
マットをひいて次は誰が跳ぶのかくじで決める。
「俺が最初かよ!」
くじの結果、俺、レナ、幸治、彰、鬼塚の順番で跳ぶ事になった。
「頑張って下さ〜〜い! 光さん!」
寿さんが応援してくれる。それを、軽く手を振って応えるのだが………。
「これ……どうやって跳ぶんだ?」
俺の十メートル先には例のデッカイ跳び箱。二十一段。
「覚悟……決めるしかないか……」
跳ぶ準備をする。
「いざ」
跳び箱に向かって走りだす。
踏み切り版を思い切り蹴りジャンプする。
さて、問題です。
俺はどうなったでしょう。
1、見事成功。
2、おしくも失敗。
3、激突。
答えは3。
激突です。
「痛ってぇ!!」
無理。跳べない。絶対に跳べない!
「駄目だな〜〜ヒカル〜〜」
レナがちゃかしてくる。
「あんなもん、跳べるかぁーー! 普段練習してる奴ならともかく……あ、待て」
レナは俺の言葉を無視して、跳び箱の前に立ちジャンプ。トスっと跳び箱の上部に触れてそのまま奥に着地。
「な…………」
「おう、レナちゃんスゲーなーー」
幸治が拍手をしてる。
それにつられて皆もしてる。
「えへへ〜〜凄いでしょ? ヒカルぅ」
「あ…………ああ」
ま、まあヴァンパイアの力だからな。跳べて当たり前だったのかもしれん。
だけど誰もなんで疑問を持たないんだ? あんな大きな跳び箱を普通に跳んでるレナの事を。少しは疑問に持てつーの!
「次は幸治だな」
「ああ。ちょっくら、跳んでくるわ」
そう言って、幸治は跳びに行く。
普通の人間は跳べないはずだからな……俺が堕落してるとかそんなんじゃないぞ?
これはどういう事デスか?
今回の跳び箱……いわくモンスターボッ〇ス。
跳べなかったのは俺だけでした。
あれ? こいつら超人? それともスーパーサイ〇人?
「お前らなんで跳べんだよ?」
「ん? 偶然だぞ夢村」
「ああ、偶然だぜ。光」
「偶然だよ、ヒカル♪」
「偶然かもな夢村」
全員揃って同じ事を言われると何故こうもムカつくのだろうか? 俺は今、こいつらに向けての殺意で胸がいっぱいだ。オンリー殺意♪
「光さん。落ち着いて。まだ種目はあるんですから」
「はい……」
そう、まだ種目はあるのだ。
確か次は“ボールタッチング”という種目だ。
ルールは寿さんが体育館の天井からボールを落としてそれを一人ずつタッチしていく。
全員がクリアーしたら、走りだす距離を少し遠くにして始める。
タッチできた者はこの種目に残り、出来なかった者はこの種目はゲームオーバーとなる。
それらを繰り返していき、最終的に残った者がこの種目の勝者となる。
「よっしゃ、次こそ勝ってやる」
俺は両方の手の平をパンってはたき、気合いをいれた。
第24話:〜筋肉番付?〜を読んで頂きありがとうございます。アクセス数が10000件を突破しました!これも皆さんが読んでくれたおかげです!ありがとうございます!次は20000件を目指したいと思いますので、頑張っていきたいです!では、これからも『居候はヴァンパイア!』をよろしくお願いします!