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第18話:〜家庭科で料理〜

 キーンコーンカーンコーン


 2時間目終了のチャイムが流れる。


「じゃあ今日の数学の授業はここまでです。ちゃんと復習しといてね〜」


 数学の先生、大月おおつき 理香りかが生徒に言う。

 この先生は身長が145センチと異様にちっちゃく、天然かつ、童顔なので小学生と間違われやすい。


「では、礼をしてくださ〜〜い」

「起立、礼!」


『ありがとうございました〜』


 やっと2時間目終わったかぁ〜。

 クラスの人達から溜め息が漏れる。

 ところで次の授業は………げっ! 家庭科だ!

 あ〜あ、調理実習だったんだ忘れてた。


「ヒカル? エプロン持ってきた?」


 レナが後ろに振り向き、聞いてくる。

 以前、レナは俺の席の近くがいいと言ったのでそうなってる。


「持ってきてねぇよ。……って、なんでお前持ってきてんだよ?!」

「あれ? ボク、昨日ヒカルに言わなかったっけ? 明日調理実習だよってさ?」

「聞いてねぇ〜〜。つーか、お前が覚えてて俺が覚えてないのがショックだ。それより、やだな〜〜。山口だよ……」


 俺は嫌気がさす。

 山口……。本名は山口やまぐち 昭夫あきお鬼塚と違って怖いのではなく、嫌いな先生だ。彼女いない歴、四十二年。

 この前、レナと寿さんに囲まれた俺を見て舌打ちしてた。それからというもの、妬んでるのか知らんが俺にだけ厳しい。

 これは先生としていい事なのか? 生徒は平等に可愛がるべきじゃないのか? いや、この学校の事だ。そんなの屁にもくれないだろ。

 とにかくどうするか……。


「夢村、俺のが二つあるけど一つ貸してやる」


 突然、悩んでると幸治が救いの手を。ありがとう、幸治が天使に見えるよ……。


「マジか? じゃあ、ありがたく借りるわ」

「おお、いいっていいって」


 俺は、幸治の手から無地のエプロンを受け取る。


「よし、調理室に行くか。もう皆行ったみたいだし」


 周りを見渡す。

 俺と、幸治しか教室には居なくなっていた。

 レナも、クラスの女子達に連れてかれたようだ。


「ああ、早く行かないと怒られるしな」


 俺達は調理室に向かった。






「持ち物検索をするぞ〜」


 クラスの一人、一人の前に行ってエプロンが持ってるか確認する。

 と、山口が俺の目の前で止まる。そして、エプロンを持ってるのを確認すると、舌打ちして次の奴のエプロンを確認しに行った。

 おおかた、俺が忘れてると思ったんだろう。

 ふっ、残念だったな。俺は友情パワーで救われたのさ。


「よーし、これから班に別れてもらうぞ。班は前に決めたとおりだ!」


 前、決めた班。

 確か、俺と同じ班はレナ、寿さん、彰、幸治だ。


「先生〜ところで、何つくるんですか?」


 そう。何をつくるのか? 当日まで知らせてくれないのだ。だから、つくりかたは黒板に書かれるまでわからない。

 だけど、その必要はないようだ。

 山口が言いやがった言葉は皆の想像を絶する事だった。


「う〜ん。自由」


『…………………』


 皆、硬直。


「あっ! 安心しろ。食材はここにたっぷり用意してあるからな」


 確かに前の机には、肉、野菜、果実、ましてや高級食材が豊富に揃ってる。

 自由ってか………ハッハッハッ。俺にそんな事通用しない。なんせ、こっちは中華から日本料理までできるんだからな。

 俺はそう思うとフライパンを皆よりいち早く棚から出して、ガスコンロに置く。

 空焚きをしてる間にキャベツ、肉、トマト、きゅうりを前の机から物色して切る。


「お、何つくるんだ?」


 彰から質問がかかる。


「ただ単に、野菜炒めでもつくるんだけだけど……」

「そうか……早くな」


 彰は箸をもう持ってる。

 お前は食うの専門か……。

 ていうか、ヨダレ拭け。料理に入る。

 段々、皆も硬直状態から普通に戻っていき、女子は張り切っている。


「さて、そろそろ炒めるか」


 ガスコンロを点火し、フライパンに油をひいて食材をいれる。


 ジュウ、ジュウ


「ヒカル、ボクもつくったよ。食べて〜」

「へ?」


 レナの方を見ると、皿に肉炒めがのってる。

 見た目はいい。

 だが、俺はこの恐ろしさを知っている。

 なので、食べたくない。


「ごめん、レナ。俺、今手放せないんだ。彰に食ってもらえ。あいつ、味覚はいいから料理の何処が良いとか悪いとかアドバイスしてくれるぞ」


 手近の代理役を推薦する。

 確かにあいつは、料理をつくらないのに味覚はいいしアドバイスも上手い。今も、いろんな人(主に女子から)味見を受けている。


「わかった。ヒカルのつくり終わったら、食べさせてね」

「ああいいぞ」


 そのまま、レナは彰の方に向かう。

 ごめん、彰。本当にごめん。レナの料理は殺戮兵器並だぞ。


「アキラ、食べて食べて」

「レナちゃんがつくったの?」

「うん。ヒカルがアキラに食べさせればアドバイスをもらえるからって」

「そうか……光も嬉しい事してくれるじゃん。じゃあ心して食べなきゃな。ではいただきます」


 あっ! 遂に食べた。


 バタンッ! ブクブクブクブク……


【彰は猛毒の料理を食べた】

【彰は猛毒に侵された】

【彰に、999のダメージ。彰は息たえた】


 成仏してくれ、彰。


 一段落ついて、安心してると


 バッコーーーン!!


 次はなんだ?

 見ると、寿さんが持ってるフライパンから泡がでてきてる。

 何やったんだ? 水素に火でもつけたのか! まさか、寿さん料理苦手だったりして? 意外だな。



 軽く目を離した隙に、俺の野菜炒めができたようだ。

 フライパンから皿に移す。

 よし、できた♪


『あれ? 夢村君も料理できるんだ』


 皿に移すと、どっからわいて来たのか女子達がぞろぞろ俺の料理にたかり食べる。


 その瞬間


『美味しい……』

『これ、夢村君がつくったの? プロ並だよ?』

『こんな美味しいのつくれるなんて……』


「ああ、そうだけど」


 女子があれやこれと、感想を言ってくる。

 これが普通なんだけどな……余程、今の女子達が料理をつくってないのかわかる。

 現代っ子の象徴だな。


『おおーーー美味い』


 あっちでは、男達が驚きの声がしてる。

 見てみると、幸治が料理をつくって皆に食べさせてた。

 ほう……幸治が料理できるとは。またもや意外だな。


「おい、光。幸治の料理美味いぞ」


 いつの間にか、復活した彰が幸治がつくった料理をほおばりながら話しかけてきた。

 ゴキブリだな、こりゃ。あの、料理食ってすぐに復活するのはゴキブリぐらい……いや、訂正。ゴキブリでも死ぬ。それなのに、お前はいったい……どんな胃をしてるんだ? 今度中身を見せてほしい。


「ああ、皆の感想を聞いてりゃわかる」

「ふんふん、いいこと思いついた」


 彰が邪悪な笑みを浮かべ皆に一喝。


「えー皆さん! これから、光VS幸治の料理対決を始めたいと思います」

「はぁ?!」


 俺と幸治は突然の料理対決報告に驚き声をだす。


「いいじゃんかよ〜。二人の腕でオレの胃袋を満たしてくれ」


 彰はグッドサインをだす。


「お前の目的はそれか」


 殺すぞ、コラ!


「まあまあ、いいんじゃね? 食材はあるし」

「でもさ……」

「それに、一回やってみたかったんだよな。料理対決」

「う〜ん。しょうがねぇ、やるか」


 "おお〜”、と歓声があがる。


《さぁ、どちらがこの料理対決を征するのか!? これは期待大です》


 彰がマイクを持って、実況をしてる。

 どっからそんなマイクだしたんだ?


「光、手加減すんなよ?」

「ああ、幸治もな」


 なんか、握手を交わしてもうなんだか分からないまま、料理対決が始まった。



 俺はとりあえず、何をつくるのか決める。

 う〜〜ん。この場合高校生が好きそうな料理は……中華? 日本料理?

 俺が悩んでると、幸治はもう決めたようだ。

 ワインに肉………ステーキをつくるつもりか!

 くそッ! 先手をうたれた! これでステーキはつくれなくなった。

 このままじゃ、負ける……。


『おおーー、炎がでてる』


《おぉっと!? 幸治選手のフライパンから炎がでたぁぁ!!! 対する光選手はまだメニューが決まってないようです。怠け者ですねーー鈍いです》


 うぜーぞ、解説者。

 黙ってろ少し。なんなら、お前を今から調理してやろうか? ん?

 と、律儀にツッコミをいれてる場合じゃない。


「できたぁーー。名付けて、男のスタミナ丼」


《なんと、早い! さっきのワイン効果か?! では、光選手がまだ終わりそうもないので先にクラスの男女ニ名ずつ試食してもらいます》


 パクリ………モグモグ


男『美味い! この丼にされたステーキとご飯が合う。さらに、たれが濃厚だ』

女『美味しい! お肉の美味さを上手く閉じ込めてます。ただ、カロリーが女性には悩みですね』


 カロリーか………

 ん? あったじゃないか。カロリー問題を解決できて、栄養価が高い料理が。

 俺は早速、食材を取る。

 キノコは………ある。よし、これでヘルシーかつ、栄養価が高い料理ができるぞ。


《ここで、光選手が動いたぁーー! 何をするのかさっぱりです》


 俺はまず、キノコをスライスする。ところで、このキノコ大丈夫だよな? 安全かどうか覚えてないや。

 俺はキノコをスライスした後に山菜類と猪の肉………はさすがにないから、豚肉を用意した。

 鍋に水をいれて、キノコスライスをぶち込み、オニオンをいれる。

 充分に煮立ってきた頃に山菜、豚肉をいれて、はい完成。


《な、な、なんと! 鍋だぁぁぁ! 何を考えてるのかと思ってたら鍋をつくったぁぁ!》


「これは俺が中国に居た頃に師匠がつくってくれた鍋だ。つくり方が無茶苦茶だが、味は保証する。それに、山菜が入ってるからヘルシーだぞ」


《では、試食させてもらいます》


 さっきの試食係が食べる。


 パクリ………モグモグ


男『美味い! 非常に珍しい味だ! それに、オニオンと豚肉がマッチしてる』

女『ん! さっきのと違って、ヘルシーです。それに、キノコのだしが微妙にきいてて、山菜の味を濃くしてます』


《さぁ、これで両者の料理の試食が完了しました。ですが、結果は一目瞭然! Win! 光選手ぅーー!! 皆さん、盛大な拍手を》


 なんか照れるな……。


「夢村。今回は俺の負けだ。だけど、次は負けないからな!」

「次あんの!?」

「当たり前だ。勝ちっぱなしにはさせておけねぇよ」


 はぁ〜〜。できるなら、やりたくないんだけどなぁ〜〜。

 めんどいし……あ〜コラそこ! 俺がまだ食ってないのに全部食うな!


「あんな美味しい料理食べた事がありません」


 寿さんが皿を持ちながらこっちに来る。

 寿さんも俺の料理食ったのか………。もういいや。昼は学食、食う。


「いや〜光さん凄いですね。こんな美味しい料理つくれるなんて」

「そんな事………ところで、寿さんは夜ご飯どうしてるんですか? 悪いですけど見たところ、料理できなさそうでしたけど………」


 寿さんは俯きながら、答えた。


「はい………昔から裁縫や編み物はできるんですけど……料理は全然できないんです。だから、夜はコンビニのお弁当です」

「え? じゃあ栄養バランスが崩れちゃうんじゃ……」

「そうなんです……」


 う〜〜ん。クラスメイトとして近所の人として、助けてあげるか……。


「なんなら、夜ご飯は俺の家に食べにきなよ」

「いいんですか!?」

「今更、一人増えようが二人増えようが同じだからね」


 その言葉にいつの間にか反応したのか彰が


「じゃあオレも、ギャフン!!」


 おっ! 面白い言葉を残して逝ったな。

 ちなみに、俺は彰の大事なところを蹴った。

 男の人ならこの痛みわかるよね? すんごい死にそうになるよね? 俺もその痛みは物凄くわかる。だから皆さん、合掌を………。


「か、勝手に、殺すな………」

「ありゃ? 生きてたんだ」


 彰が股間を抑えながら。立つ。


「いき、なり、股間を、強襲する、とは、ざっけんな!」


 股間を抑えたまま攻撃してくる。

 もちろん、そんな攻撃あたるはずもなく避ける。

 そして何事もなかったようにスルー。


「てな訳だから寿さん。一人増えようが二人増えようが関係ないんで来て下さい」

「はい、光さんがそれでいいのら喜んで!」


 キーンコーンカーンコーン


 時計をみる。もうお昼時。料理対決なんてバカげた事やってたら、時間がいつの間にか進んでたようだ。

 皆、急いで教室に戻って行く。

 家庭科は挨拶、いらないからチャイムがなったらそく教室だ。


「じゃあ寿さん。俺、学食行きますんで」


 俺は廊下に急いで駆け込んで行く。

 

「あっ! …………いっちゃった………」



 次は体育か……。

 スタミナ付けとこ………。




 余談だが帰りのHRにみんなが腹痛を訴えた。

 おそらく、あのキノコがあたったのだろう。


 ふぅ〜〜食わなくて良かった。


第18話:〜家庭科で料理〜を読んで頂きありがとうございます。え〜〜すいません。次回の更新は遅れて、来週の水曜日になりそうです。理由は本来更新すべき日曜日に修学旅行があり、更新が困難だからです。本当に申し訳ありません。では、これからも居候はヴァンパイア!をよろしくお願いします。

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