第16話:〜銀行にて〜
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「おらぁ!! 金出せや!」
前回の回想。
俺達は皿を買いにインテリアショップに行った。そして帰りに預金を引き出す為、銀行に行った。だが、その時一発の銃声が轟いた。何事かと思って見てみると、片手に本物らしき銃を持った男が銀行のカウンター定員に銃を向けていた。
前回の回想終了。
紛れも無い、テレビで観た犯人だ。
俺は、直感する。
「早く、このバッグに一億入れろ! 察が来るだろうが!」
「す、すいません!」
銀行員をせかす。
どうやら相当焦ったうえに、殺気だってる。
しかし、何故? 宝石強盗をしたなら、金は充分にあるはず……
まあ、俺には関係ない事だ。何をしてても。
と、その時に銀行の外でパトカーのサイレンが鳴った。
『宝石強盗及び、銀行強盗犯! 直ちに出てきなさい! 抵抗しても無駄だ! 君はもう囲まれている!』
ドラマとかでよく聞いたり観たりする光景だ。
「くそっ! こうなったら……」
犯人はキョロキョロし、近くに居た20代くらいの女性を後ろから首締めの形に持って行き、警告した。
「警察共!! 銀行に一歩たりとも入るなよ! この女が死ぬぜぇ!!」
そう犯人は言うと、シャッターを降ろし外から見えなくする。
この銀行は完全に孤立した。
いわゆる、立て篭もりっつーやつである。
だが、俺達は抜け出そうと思えばすぐに抜け出せる。
何故なら………。
「すーーすーー」
この状況で可愛い寝息をたてて、俺に寄り掛かりながら寝てるアホヴァンパイアが居るから。
よくこんな状況で寝られるな……ある意味すごい。
ちなみに、ここに居る人の数は俺達あわせて8人。内三人は銀行員、二人は預金やなんらかを引き出しに来た人だ。それと、犯人一人。
まったく、今更ながら一生に一度するか、しないかの体験をするはめになるなんてなぁ〜〜。
なんて事を考えてると、驚いた事に犯人はさっきまで人質にしてた女性を解放した。
「ごめんね。苦しかっただろ?」
犯人は女性を気遣って言う。その姿は知らない人から見たら、とても犯人とは思えない。
女性も俺と同じく、驚いてる。
ま、妥当だな。
さっきまで、殺気だっていた人物がいきなり優しくなったら、誰だって驚く。
「あ……あの……」
「大丈夫。僕は君に危害を加えないし、ここに居る人達にも危害を加えるつもりもない。だから安心して」
鋭い目の中に優しさがある。本当に何も危害は加えなさそうだ。
でも、なんでだ? 悪い人じゃないのは今わかったし、どうして宝石強盗なんか………本人に聞いた方がよさそうだな。
すると
「あの……なんで、宝石強盗なんか……それに銀行強盗も」
一人の女性銀行員が俺の思って事を犯人に聞いてくれた。ありがたい。
「いや〜〜友達の借金保証人になっちゃってさ〜それで逃げられて僕が払う事になったんだよ〜一億円」
犯人は笑っている。
そこは笑うところじゃないですよ?! かなりヘビーな話しだ! 笑って話せるあなたがある意味すごい! 俺でも、過去を話してる時は切ない気持ちになるのに……。
つーか、一億円とか言って何さらりとヤバい金額言ってるだッ?! 一生かかっても、払える金額かどうかわからないんだぞ? わかってんのか? この人………あ、だから宝石強盗したのか……でも、肝心の宝石が見つからない。
今度こそ俺は勇気を出して犯人に問う。
「あんたはなんで、宝石強盗をしたってのに宝石がないんだ?」
少し口調が馴れ馴れしかったか?
だけど犯人は笑顔で答えてくれた。
「それはね〜〜途中で宝石を入れた袋を落としちゃったんだ♪」
♪じゃねぇーーー! この人、本当に大丈夫か? って事はなんだ? 宝石を落っことしたから次は銀行強盗ってか? 捕まる可能性大だ!
「あのぉ〜〜〜お言葉ですが、それじゃあ折角逃げたのに、捕まってしまうじゃないですか?」
「うん。僕、さっき気付いたから、わざと悪い人の真似してとりあえず警察が入れないようにしておいたんだ」
アホだぁーー!! こんなアホの人質になってるんなんて、俺もアホだぁーー!!
もう、いいや……こんな所にいないで、とっととテレビ観たい。
「あんたは、どうしたいんだ?」
「何が?」
「いや、こんな所に立て篭もってその後はどうするんだ?」
犯人は険しい表情になりながら
「考えてなかった♪」
軽い………軽すぎる……駄目だ。ツッコミしきれない……。
「実は言うと僕には16歳の妹がいるんだ。だから、借金なんかで不自由させちゃあいけないと思って……強盗したんだ」
俺は何故かそれを聞いた時に犯人をこれで説得できると、ニュータ〇イプ並の思考能力を発揮させた。
「バカか?」
「へ?」
「妹の為に強盗した? それは本物のバカだ!」
「なんで!」
犯人は俺にくいかかる。最初に言ったのは俺だけど……
「あんた……妹さんの事を全然わかっちゃあいねぇよ! 強盗なんかしたお金で不自由なく暮らせるようになったって、妹さんは笑顔の一つも見せてくれないだろうよ」
「そんな……そんな事はわかってる!!」
俺はどんどん犯人を説得? していく。
だけど、説得の裏には俺の気持ちも充分に入ってた。
「いや、わかってない! 現に今強盗してるじゃないか!」
「それは……妹を大切に思ってるから……」
「大切に思ってるなら何故、妹さんの笑顔を最優先にしない!」
「ッ!!」
犯人は目を見開き、驚愕する。
よし! 後、もう一押しだ。
「今からでも遅くない。妹さんの笑顔を−−−」
『警察だ! 銃を捨てて手を上げろ!』
いつの間にか、警察はどっからか侵入してきて犯人に銃口を向けていた。
犯人はすぐさま、女性を人質に取り、壁に背を向ける。
「くるな! 来たら撃つぞ!」
くそっ! もう少しで犯人を説得出来たのに……なんちゅ〜事をしてくれたんだ! 警察はよ!
「よく寝たぁ〜〜」
その時、レナが目を覚ました。
今頃かよ……もう少し早く起きてくんねぇかな?
「あららら、大変な事になってるみたいだねヒカル」
「ああ。お前が呑気に寝てた間こっちは修羅場だ」
しかし、この状況はお世辞でもいいと言えない。下手したら犯人が狂って女性を撃つかもしれないし、犯人が警察に撃たれるかもしれない。
どうするか……
くそ! こうなったら、意地で押し通すしかない!
「おい! あんた! こんな事をしても妹さんが悲しむだけってさっき言ったろ! だったら自首して、人生やり直せ! あんたならきっと、やり直せる!」
「くッ……うるさいうるさぁーーい!」
犯人は銃を乱射する。
パヒュン……
一発の銃弾が俺の腕をかすった。
「痛ッ!」
そして………
ドサッ……
後ろで何かが倒れる音。
「あはっ……ヒカル……銃弾……当たっちゃった……」
レナの声。いつもは、聞いてる人も元気になりそうな、はきはきした声。だけど、今は弱々しい声……。
俺はゆっくりと後ろを振り向き、レナを確認。
腹部から血が出て、倒れていた………。
俺はこの状況を理解するのに、しばしの時間を使った。
場は静寂……。
「レナぁぁーーー!!」
ただ……俺だけの声が静寂を破っていた。
「おい! レナ! レナ! 返事しろ! このバカヴァンパイア!」
レナを揺さ振る。
だが、返事は帰ってこない……
俺はそのまま叫んでいた。何を言ってるのか混乱しててわからない。
頬を伝う涙……。
両親が死んだ時からいっこうに流してない涙……。
その涙が今再び流れ出る……。
大事な者を失う時に流す涙が……
滝のように……
ただただ、俺は泣いてるしかなかった。
泣き止む。
いつの間にか、犯人は逮捕されて人はいなくなっていた。
警察は俺の事をかわいそうだと思い、そっとしておいてくれたらしい。
銀行から出ると、立入禁止の黄色いテープが張ってあった。
それを潜り、一人の警官の元へ。
「あの……」
「ああ、君か。どうしたの?」
「俺の脇に居た、撃たれた女の子は今何処に……」
不安がどっと、押し寄せる。
これで、息を引き取ったとか言われたら俺は今度こそ立ち直れないっぽい。
「その女の子ね。〇〇病院に連れてかれたみたいだよ」
その病院の名前を聞いた途端に走りだした。
無事でいてくれよ……レナ!
第16話:〜銀行にて〜を読んで頂きありがとうございます。アクセス数5000件突破しました♪これも皆様のおかげです。感謝です。それと、今日ちょうど僕の誕生日です。誕生日の日に更新できるなんて感激です。ではこれからも、居候はヴァンパイア!をよろしくお願いします。次回の更新は本編とは関係ないGW企画をやろうと思います。5月2日 白黒