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第10話:〜光の過去2〜

 早朝。

 光はホテルのベッドで起きた。


 周りを見渡す。


 やはり、自分以外だれもいない。

 昨日の出来事は夢じゃなかった。

 マフィアの銃撃戦に父さんと母さんが巻き込まれて死んでしまった。

 光は泣きそうになった。だってまだ、十三歳なのだ。親がいなきゃなんにもできない歳である。

 だけど、光は泣かなかった。いや、泣けなかった。昨日で、一週間分の涙を流してしまったみたいだ。

 だから、今は少しはスッキリしている。


「さて、ホテルのチェックアウトしなきゃ。中学生でもできるかな?」


 光は自分だけの荷物を取る。

 寸さんが昨日、『荷物は置いといていい』って言ってくれたのでそのままにしておき部屋のドアを開け、閉める。


 しゃきっとしなきゃなーー。


 そう思うと光は廊下を歩き、ホテルのロビーに着く。

 途中で怪訝な顔をしてた人がいたが無視した。

 カウンターまで行きチェックアウトする。


「すいませ〜ん。チェックアウトしたいんですが……」


 その時カウンターの奥から寸さんが現れた。


「やぁ、早いね」

「寸さんに教えてもらった山に行くからね。早めに行かないと日が暮れる」

「あはは、そんなに時間かかんないと思うよ」

「そうなんですか?」

「うん。山、行くんだろ? はいこれ」


 光が受け取ったのはお金。結構多い。日本のお金にすると何円あるんだろ。


「こんなにいいんですか!?」

「うん。僕からのせんべつだよ」

「ありがとう。じゃあ俺、行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」


 そんな会話をすませると出口へ向かう。

 これから山に向かう決心を胸に秘めて。


「よし、気合い入れて行くか!」


 ここから、光の日本では想像する事も無かった苦難の日々が始まる。






「くそ〜まだ着かないのかよ」


 今、光は山に居る。

 さっきから大体、三時間は過ぎた。

 寸さんが言うには小屋があり、そこに師匠は居るらしい。

 が! 全然、これっぽっちも見つからない。


「ちくしょ〜〜蛇もいるし」


 蛇は光の事を確認するといそいそ逃げてった。

 ほとんどの蛇は元々、何にもしなければ襲ってこないのである、と、光は信じてる。

 どの動物だって怒る時もあれば優しい時だってある。怖がらず接すればいいのだ。


「ふ〜〜。確かに、ここだったら動物に殺される事はあっても飢え死にはしないな」


 獣道をひたすら歩く。

 その時、草むらが少し動いた。


「なんだ!?」


 ガサガサ


 目に見えない者への不安。

 次の瞬間、なにかが突進してきた。


「ぐは!!」


 腹に凄い激痛。

 イテテテ、なんなんだ?


 辺りを見渡す。


 ブルルルルッ


 ………………猪!!


 ここには猪もいるのか!?

 と、そんな余裕構えてる場合じゃないな、次くらったら多分気絶する。

 猪がこちらに向かって走ってきた。

 それをサイドステップでよける。そして、足で猪の腹を蹴る。


「ごめんな、正当防衛だ!」


 猪は小柄だった為、吹っ飛ぶがすぐに立ち上がり攻撃モーションにはいる。

 猪の攻撃は単純でわかりやすい。

 だけど数が増えれば別。


「あらら、マズいな」


 猪、三匹。

 いくら単純でもこれはキツい。

 ここは逃げるか。

 そう思うと光はすぐ、走る。

 だが相手は猪。すぐ追い付かれる。


 やられるッ!!


 だが、いつまでたっても痛みはこない。

 後ろを振り返ると、ついさっきまで光を攻撃しようとしてた猪は絶命してる。矢を頭に突き刺したまま………。


「なかなか面白いものをみせてもらったよ、君!」


 はるか前方、一人の女の人が弓を構えながら立っていた。

 誰だろう? ん? まさか寸さんが言ってた師匠? でも………。

 光が驚くのも無理はない。少女だから。

 光よりかは年上だが、おそらく高校生ぐらいだろう。

 とりあえず、少女に駆け寄り礼を言う。


「助けていただきありがとうございます」

「いや、いいって。面白いもの見せてもらったし」

「あの………」

「ん?」


 間違ってたらどうしよう? 変な人って思われるかな?


「あの……もしかして寸さんのお師匠さんですか?」


 しばしの沈黙……。

 だが、あっけなく楽観的に崩れされた。


「うん、そうだよ! 寸の知り合い?」

「いや………その……」


 光は事のいきさつを話し始めた。

 そして、十分ぐらいしただろうか? すべてをわかったように寸さんの師匠は頷いて


「わかった。じゃあ家にきなよ。たいしておもてなしはできないけどね」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 なんて心の優しい人なんだろう……光は思った。


「でも、私のルールにはしたがってもらうよ?」

「ルールって?」

「それは、家に着いてから説明するよ」


 光達は歩きだした。







「そういや、君の名前は?」

「俺の名前ですか? 夢村 光といいます。あなたは?」

「私はしん 羅槞稟らおりんだよ。呼びやすいようにリンってよんで」

「え? でも、初対面の人に呼び捨ては………」

「じゃあ明日からリンって呼んで。そうすれば初対面じゃないでしょ?」


 なんつー理屈だ。

 光は苦笑いをした。


「あの……女性にこんな事聞いちゃいけないんですが、今何歳ですか?」

「うん、本当に聞いちゃいけないね」

「す、すいません。でも……」

「しょうがないな〜。さっきいいもの見せてもらったし特別だよ? 年齢は……十七だよ」

「は?」


 本当に高校生ぐらいだった……。

 だとしたら、寸さんの師匠をやってた時は十二?!


「あの、て事は寸さんの師匠をしてた時は十二歳の時ですか?」

「うん、そうだよ。それが?」

「いや、そしたら何の師匠をしてたんですか?」

「だからそれは、家に着いたら教えるよ」

「ちぇ〜〜」

「なんか言った?」

「いえ、なんでも」


 光は多少いじけながらも、リンさんの家を目指した。






 そこは山小屋だった。

 小屋の周りには薪がところせましと、落ちていた。


「さ、入った入った」

「おじゃまします」


 中は檜の匂いがする。おそらくこの小屋自体が檜で作られてるのかもしれない。

 周りには棚、ベッド、机、石作りの調理場。飯盒などが置いてある。

 広さは横十メートルぐらいに縦十五メートルぐらい。高さは屋根が上に向かって三角形型になってるがてっぺんまで4メートルぐらいだろう。

 よく、見てみると明かりがランタンしかない事に気付いた。


 って事はだ。


「あの、もしかして自給自足ですか?」

「うん♪もちろん♪」

「飯は?」

「自給自足」

「水は?」

「自給自足」

「風呂は?」

「外にドラムカンがある」


 ほとんど、自給自足じゃねぇか!


「ちなみに、炎は?」

「大丈夫。それはマッチがあるから」


 少し光は安堵する。それまで自給自足って言われたらどうしようかと思ってたところだった。


「まあ、つまり要点だけ言うと、米とパンと炎以外ほとんどは自給自足って事」

「さいですか」

「あ、ところでルール教えてなかったね」

「え? あ、はい」


 そう言われればそうだった、忘れてた。


「ルール1:自給自足をサボらずすること。

ルール2:毎日五時起き。

ルール3:拳法を習い心身ともに清める事」

「拳法って………何でですか?」

「私が教えるのは中国拳法で気を使った練習。それをする事によって、体内の邪気がいずれかとれるわ」

「邪気って……そんなの……」

「マフィアの事を恨んでないの?」

「う………」


 痛いところを突かれた。

 確かに光はマフィアを恨んでる。両親を殺したマフィアを………。


「ほらね。だから拳法を使う事によって清めるのよ。それに体を動かすのは気持ちいいわよ」

「はい………」


 しぶしぶ、光は納得する。


「じゃあ今日はさっき狩った猪と熊を食べましょう。拳法は明日から」

「で、その猪はいいとして熊は?」


 まさかとは思うけど


「はい。弓矢」


 やっぱり。


「さ、行くわよ」

「ヤだぁーーー!!」


 ズルズルズルズル






 光の苦難の過去はまだまだ続きそうだ。


第10話:〜光の過去2〜を読んで頂きありがとうございます。これからも居候はヴァンパイア!をよろしくお願いします。次の更新は水曜です。

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